第10話 冥界の精霊達

 毎日の売り上げが、約2千万円。

 税金で半分ぐらいは持って行かれるって税理士さんが言ってた。

 会社を立ち上げた方が節税できますとも言われたが、どうなんだ。

 経営能力や営業能力なんて、俺にはない。

 サラリーマン時代の仕事で判っている。

 人間関係で失敗してるから、経営は無理。


 会社が大きくなったら、乗ってられる典型的なパターンだよな。

 漫画の読み過ぎか。


 問題はダンジョンオーナーのスキルを持ってても、廃ダンジョンが法律的に俺の所有じゃないってことだ。


 現状を整理してみるか。


 魔力の供給が落ち着けば、買取値段は下がると第一魔力銀行の八城やしろさんに申し訳なさそうに言われた。

 まあ、10分の1ぐらいになっても構わない。

 一般人の資産額としてはかなり持っている方だからな。

 だが、この稼ぎでは1年以内でダンジョンの観光地化は現状無理。

 1年で30億円も稼げれば良い方。

 マンションぐらいは建つが、それだけだ。

 10年、金を貯めても観光地化は厳しい。

 この問題はひとまず置いておこう。


 動画の再生数は伸びている。

 それに比例して経験値の増え方も上がっているが、心霊スポットに来る人間は少ない。

 もう夏も終わりだ。

 レベルが爆上がりは夢だな。

 近場のゴキブリとネズミ駆除の仕事が減って、強化ポイントが溜まらない。


 何か考えないと。

 利点としてはダンジョンの中なら、俺はほぼ無敵で、神だと言っても良い。

 できないことは多いが、万能と言っても良い。


 とにかく宣伝だ。

 心霊スポットダンジョンを有名にする。

 使える金はそれなりにある。

 テレビ局に金を払って、番組で紹介してもらう。

 第一魔力銀行の伝手を使えば可能かも知れないが、効果は一時的。

 コスパ的に良くない気がする。


 新原にいばらさんに電話してみた。


「突然、電話してごめん。いま大丈夫?」

「ええ、今夜の配信の打ち合わせ?」


「いやね。何かしないと、頭打ちなんだよ。俺っておっさんだろ。人生も若者からしたら、残り少ない。同年代で成功している奴はごまんといる。うらやむほど、俺に才能はあるとは思えないが、焦りがね」

「私からしてみたら、成功者に見えるけど。何が不満なの?」


「覚醒者として天下を取ってみたい。子供らしい夢だろ。笑ってくれても良い」

「私も笑えない。私の夢はアイドルになることなんだけど、歌とダンスの才能がなくて、諦めたの。でも心のどこかでくすぶっている。配信で幽霊が怖いのに、続けているのも、未練なのかな」


 アイドルになりたかったって意外な返答。

 あっ、閃いた。

 ダンジョンの中なら俺はなんちゃって神様。

 不可能などほとんどないはず。

 新原にいばらさんをアイドルにすることもできるんじゃないか。


「よし、俺が新原にいばらさんをアイドルにしてやろう」

「えっ! どうやって?」


「霊能力系のスキルでだ」

「嫌! 絶対に嫌!」


「嫌も嫌も好きのうちだよ」

「怖いのは駄目!」


「諦めろ。そんなに怖くないさ。たぶん」

「たぶんって! ちょっと! 信じられない! あなたでなくて、私が怖いの!」


「お試ししてから決めろ」

「怖かったら辞めるから」


「それで良いよ」


 新原にいばらさんをセンターに置いて、美女レイスと、美女ヴァンパイアと、美女バンシーと、美女デュラハンだな。

 グループ名は『ランパデス』。

 新原にいばらさんの魔改造をどうするか。

 色々と手はある。

 憑依は嫌がるに違いない。


 俺のダンジョンのモンスターとして登録するのが手っ取り早いな。

 これなら、能力はいくらでも付けられる。

 魔力が必要だけど、使う大量のゴミは八城やしろさんに頼むしかないか。

 魔力は売れないけど、ゴミを処理すれば儲かるから問題はないはずだ。


 ステージは1階層のボス部屋にしよう。

 機材を設置しないとな。


 問題は水道と電線だ。

 トラップとしてなら、作れるんだけどね。

 俺がダンジョンのオーナーだとばれそう。


 ダンジョンコアの幽霊に、コンサートして人を集めるって、俺が言って説得したということなら問題ないな。

 新原にいばらさんとダンジョンの中。


「絶対に怖くないのよね」

「ああ」


 【ダンジョンオーナー、モンスター登録】と小声で呟いた。


「登録を許可しますか? はい、いいえってメッセージが出たんだけど」

「アイドルグループに入りますかってことだよ」


「なんとなく嫌だけど。はいを押して……。えっ、ステータス覚醒したみたい。何で」

「ごめん、嘘をついた。幽霊を新原にいばらさんに登録したんだよ」


「えっ、騙したの?! 酷い! 信じてたのに! 憑依されてるってこと!」

「憑依は能力だけね。怖くないだろ。メンバーを紹介するよ。ついてきて」


 ボス部屋に連れて行く。


「ひっ!」


 新原にいばらさんの顔が引きつった。


「今日から一緒に活動するメンバーだ。レイスのあおい麗子れいこ。ヴァンパイアの赤井あかいすう。バンシーの白木しらき芽供めく。デュラハンの白銀しろがね歩崙ぽろん。グループ名はランパデス」

「いやっ! 絶対に嫌!」


「みんなイケてるだろ。美人だと思うけどな。個性もあるし」

「レイスとバンシーが特に嫌!」


「メンバーに失礼だろ」

「だって、餌認定されてる気がする」


「俺が制御してるから問題ない。アイドルを諦めるのか? 何か成すには犠牲はつきものだ」

「わかったわよ。やればいいんでしょ。暗闇でなければなんとか我慢できるかも」


新原にいばらさんの芸名は黄原きはら響子きょうこね」


 曲は依頼したが、まだ出来てないので、他のアイドルの曲をやってみる。

 新原にいばらさんには、踊り子と吟遊詩人系のスキルを付けた。

 メンバーのモンスターも同様だけど。

 新原にいばらさんだけ、テイムも付けておいた。

 メンバーをテイムするいはまだレベルが足りないが、まあメンバーを引き連れて、他のダンジョンでレベル上げすれば、そのうちテイムできるさ。

 スキルの力は偉大だな。

 素人目にはかなりイケている。


 ただ、笑顔がない。

 新原にいばらさんなんか顔が引きつってる。

 レイスは無表情。

 バンシーは泣き顔。

 ヴァンパイアは冷たい笑顔。

 デュラハンは皮肉な笑顔。

 アイドルの表情ではない。

 だが、特色のひとつとしてはいいかもな。


 動画投稿サイトに、ランパデスチャンネルを作って、練習の動画をアップする。

 廃ダンジョンの1階層のボス部屋で練習してるよって情報も載せておく。

 練習スケジュールも一緒に載せておいた。

 さて、反響をしばらく見て見よう。

――――――――――――――――――――――――

あとがき

 ここで休止です。

 再会は未定ですが、コンテストに参加予定なので、9月1日から11月4日までに5万字は書きたいです。


 ええと、ホラー要素が空気ですね。

 書き始めはプロットなしで書いたので、行き当たりばったり感が凄いと思います。

 改訂するなら、ざまぁ要素を追加ですかね。


 アイドル要素で最初からやれば良かったような気もします。

 その場合は新原にいばらさんが主人公ですかね。

 怖がり女性が、ホラーコンセプトのアイドルを始めるってとんでも設定かなぁ。

 需要が低そう。

 書いてみたい気はかなりします。

 女性向けだと恋愛要素を追加ですかね。


 男主人公で行くなら、敵に対してのざまぁ手段を恐怖体験でやるみたいな感じですかね。

 相手を自殺に追い込むぐらいとことんやるみたいなえげつない感じだと、かなりダーク路線になります。

 あと、追加するとしたら、戦闘要素ですかね。


 題材の練が2時間ぐらいだったので、後からかなりアイデアが湧きました。

 ポテンシャルは秘めている題材かも知れません。

 この作品は書いてて色々と勉強になりました。


 家族のリクエストでホラーのお題で書きましたが、家族の誰もこの作品を読みません。

 あらすじだけでふーんと言われて終わりました。

 失敗作だとは分かってます。

 悲しい。

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心霊スポット廃ダンジョン《でっち上げ》~不運の連続から、廃ダンジョンを手に入れた。ダンジョン復活を目指して頑張るぞ~ 喰寝丸太 @455834

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