第4話 へんたいら
家を出る直前、
「あ、
「…なんですか?」
「
グイグイといっても…何を話せばいいのやら。
「んじゃ、いってらっしゃ~い!!」
俺は先輩と歩きながら、話題を探していた。
天気…はもう夜だし、学校…はまだまともに始まってないし、う~ん。
(ん?そういえば、なんかさっきから先輩がいる右側が
先輩がいるほうに目を向けてみると、
「フフッ」
思わず笑いがこぼれてしまった。
そこまでして本を読みたいのか、子どもみたいで
先輩は本に集中しているのか、何もリアクションがない。
先輩が楽しそうならそれでいいのかな、とも思いながら、先ほどの
「
先輩と話せる
「先輩、その本
返事はない。
「先輩?」
集中すると、本当に周りの声が聞こえないんだな。
「先輩っ」
俺は先輩の目の前に手を出して上下に振ってみた。
まだ気づかない。
最終手段だと思いつつ、先輩の肩をトントンと叩いてみる。
ようやくこちらに気づき、ゆっくりと視線を向けてきた。
「あ、あの…その本、そんなに面白いのかなぁと思って」
「うん。
「そうなんですね!俺も読んでみようかな~…なんて。先輩が読むような本は
「たしかに、これは少し
「そ、そうですよね~」
先輩のほうを見ると、何か言いたそうにモジモジしている。
「先輩。どうしたんですか?」
「…と思う」
「え?」
「これは少し
そう言った後の先輩の表情はどこか不安そうで、ソワソワしていたように見えた。
きっと、俺が興味を持ってくれるか不安なのだろう。
しかし、先輩が関係していれば、俺が興味を持たない話題などない!!
「わかりました。ありがとうございます!明日本屋で探してみます!」
「…貸す?」
「…え?」
「私持ってるけど、貸そうか?」
「いいんですか!?」
「今はそんなに読んでないし」
「か、借ります!貸してください!すぐに読んで感想提出します!」
「フフッ」
「え…」
「ごめん、ちょっとおもしろくて」
先輩は顔を本で隠していたが、頭につけたヘッドライトの光が
俺はてっきり先輩に嫌われていると思っていたが、そうでもないのかもしれない…
このチャンスに今までの
「あ、あの…先輩」
「なに?」
「さっきはすいませんでした。アパートの下の階から見ちゃって。先輩の…その…パ…パン──」
「ああ、ごめんね。なんか今日コンタクトの調子が悪くて、睨んじゃってたよね」
「え、あ、いや!全然大丈夫です!でも、洗濯ものは部屋の中のほうがいいですよ!みんないるとはいえ、女の子の一人暮らしなんで」
この後に続く「先輩のパンツ、他の人に見られたくないんで!」はグッと飲み込んだ。
「フフ、なんかお父さんみたい。普段は部屋の中に干してるから大丈夫だよ。あれはシュシュだったから、大丈夫かなって。天気も良かったし」
え、フリフリがついている真っ白な布ってシュシュだったの?
あぶねー…命拾いした…
「顔色悪いけど、大丈夫?」
「え、あ、大丈夫です!」
あと
「あと、ご飯前の
「ああ、何か話してたね」
「え、内容は聞いてないんですか?」
「うん、本に夢中だったから」
「あ、そうなんですね!じゃあ、大丈夫です!」
「??」
首の皮一枚つながった…
そうこうしている間にゲームショップに着いた。
ゲームを受け取り、
先輩を見ると、何やらソワソワしている。
そっか、俺が話しかけたから本を読むのをやめてくれたんだった。
とりあえず、今日のところはたくさん話せたからいいよな。
「先輩、本読みたいんですよね」
先輩はえっ?と言わんばかりに
親の顔色を
「いいですよ、前は俺が見てるんで」
先輩は再び本を読み始めた。
本を読んでいる先輩の表情はとても楽しそうで、俺と話してるときより楽しそうに見えた。
それがなんだか
いま先輩と話したら「俺と話すのと本読むの、どっちが
メゾン・ド・平和に帰るやいなや、
「ああ!へんたいらくんおかえり!」
「何ですか、へんたいらって」
「
なぜ、
俺はゆっくり視線を
「ごめんなさい、
俺は
あれ、先輩またコンタクトの調子悪い?目つきが
「おやすみなさい」
「あ、せんぱ──」
「なんかわかんないけど、
なるほど、これは
といった感じで、先輩との仲はいきなりマイナススタートから始まった。
果たして俺は、ここでうまくやっていけるんだろうか…
メゾン・ド・平和の平和じゃない日々 シライシ @omusubiZZ
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