ペンギンのアイスクリームやさん
霜月あかり
ペンギンのアイスクリームやさん
ペンギンのフリオは、南の国の島にやってきました。
ひんやりした氷の国を出て、船にのって、ずっとずっと旅をして。
「つめたいところじゃなくても、アイスはおいしいはず!
ぼくのアイスで、あつい国のみんなをよろこばせたい!」
そう思ったからです。
島に着くと、フリオは大きなクーラーボックスをかかえました。
中には、カラフルなアイスがぎっしり。
「チョコに、バニラに、すいかに、ココナッツ……。
よし、これでいいぞ!」
小さなテーブルをひろげ、ヤシの木に「アイスあります」のかんばんをかけて――
南の島の「ペンギン・アイスクリームやさん」、オープンです!
まもなく、最初のお客さん。
どしん、どしん、と大きな足音。ぞうがやってきました。
「チョコアイスをくださいな」
「はい! どうぞ!」
ぞうはペロリ……。ぱくっ!
あっというまに、スプーンごと食べてしまいました。
「お、お客さん! スプーンは食べ物じゃないですよ!」
「おっと、すまんすまん。スプーンまでチョコの味がしたもんだからなあ!」
フリオはあわてて新しいスプーンをわたしました。
つぎのお客さんは、首のながーいキリン。
「バニラアイスをひとつ」
フリオはカップをさし出しましたが……
キリンの口は、あまりにも高いところにあって、とても届きません。
「じゃあ、ボクがあがるから! 首をもうちょっと下げて!」
フリオはヤシの木にのぼり、のびあがって――やっと、アイスをわたすことができました。
「おおっ、ひんやりおいしい!」
キリンは大よろこび。
フリオは汗をぬぐいながらにっこりしました。
そして川からやってきたのは、カバ。
「すいかアイスをひとつください」
カバはもぐもぐ、ごくん。
「ん~! つめたい! 口の中でシャリシャリして、川の水までつめたく感じるよ!」
にこにこと笑うカバを見て、フリオの胸もほかほかあったかくなりました。
夕方になるころ。
アイスはすっからかん。
「ふぅ~……! もうのこってないや」
フリオは、つかれてどっかりすわりこみました。
するとどうでしょう。
ぞうはバナナを、キリンは木の実を、カバは川の冷たい水を持ってきてくれました。
「アイスやさんのおかげで、すずしくなれたよ!」
「ありがとー!」
フリオはにっこり笑いました。
「こんなお客さんばっかりなら、毎日やりたくなっちゃうな!」
――こうして今日も、ペンギンのアイスクリームやさんは大にぎわいです。
ペンギンのアイスクリームやさん 霜月あかり @shimozuki_akari1121
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