第12話

タイムマシーン」




第十話




中編




「決別」




あの夜から、俺の頭に残った残像が消えない。




劣等感、葛藤、、




様々な想いが俺の心の中で交差する。




「チクショウ。。」




俺は布団の中で、任務ギリギリまで閉じ籠っていた。




「クゥ~ン、クゥ~ン」




獅子丸が何だか悲しそうな声を上げ、俺の方に顔を擦り寄せてきた。




俺は今の気持ちに罪悪感や嫌悪感を感じ、アドニスの相棒である獅子丸にも申し訳なさを感じた。




それでも、彼は、まるで、元気を出してと言わんばかりにペロンと大きな舌で俺の頬を舐めてくれた。




「ありがとう、ごめんね、獅子丸。」




「シュピ~ シュピ~」




俺が頭を撫でる度に、獅子丸はやはり、悲しそうな鼻声を挙げていた。




さて、やがて、気持ちの整理もつかぬまま、任務に向かった。




「早安(ザオアン=おはよう)ディディ(弟)!」




「あ、、」




俺は蘭さんに会うと、つい、昨夜の事を思い出した。。




「ドシタカ、ディディ、眠いか?」




「あ、いえ、不是。没関係(大丈夫です。)」




「ハハハ、ディディ、分かった、アドニスがデカケタ、ダカラ、想他、対不対??(寂しいね)??」




そう言い、彼女は無邪気に身体の距離を縮め、頭を撫でてくれた。




蘭さんが優しく接すれば接する程、俺の胸中は複雑だった。




台湾人独特な大きな二重瞼、スラリとした手足。




俺は蘭さんに恋心を抱いている、、分かっている。そして、それは絶対に叶わない。分かっている。




アドニスと自分では全く違う。分かっている。




何度も自分に言い聞かせた。




さて、その日も昨日と同じ任務を済ませ、俺は蘭さんから、なるべく距離を置く為、食堂でカツ丼とプロテイン、野菜サラダを持ち帰りにしてもらい、部屋で獅子丸と一緒に食べた。




獅子丸には、20キロはある牛肉をアドニスが巨大冷蔵庫にストックしてた中から、取り出して与えた。




主人そっくりに無邪気で大食漢の獅子丸は、牛肉を平らげると嬉しそうに俺の顔をペロペロと舐め、甘えてきた。




「獅子丸、お前は優しいね、主人に似て。。」




「クォン?」




彼はそのつぶらな瞳をキョトンとさせ、不思議そうにこちらを見つめている。




その時、獅子丸が窓の向こうを見つめた。




カーテンをめくると、闇夜に一人、金髪の青年が急いで長老の元へと走っているのが見えた。




アドニス!?




もう、他地域に任務に出向いた筈じゃ?




俺は直ぐに帯刀をし、部屋を出て、後をつけた。




「アドニス、何があったのじゃ??」




長老が慌てて尋ねた。




「じっちゃん!敵将、鬼神が遂に突如現れたんだ! 黒竜も来た!第三、第四部隊全滅、第五隊もアランと何人かしか生き残ってないんだ! 」




「じっちゃん!今からでも全軍で向かう許可をくれ!」




彼等の会話を聞き、俺は初陣の時とは比べようもない程、恐怖を感じた。




だが、それと同時に俺は鞘に収まる刀を掴み、戦いたい、武功を重ねたい、など、まるで、鎖に縛り付けられたもう一人の獣の様な自分が今にも、その鎖を噛みちぎり、飛びださんとする様な感覚を覚えた。




「分かった、アドニス、直ぐにワシ含め、二ツ星以上のトラベラー達、精悦部隊、それと優を連れて向かおう!」




(え??)




まだヒヨッコの俺を?




俺は驚いたが高揚した。




「いや、駄目だ、じっちゃん!! まだ優には早すぎる!」




アドニスが長老の言葉に首を横に振った。




普段なら違う受け取り方が出来ただろう。。




だが、俺の中で本当に愚かな意固地な想いが出た。




(俺だって、アドニス、お前みたく出来る、甘くみるな!!)




「だが、アドニス、鬼神を倒すには、、優の~~~が鍵となるのじゃ。」




一部、聞き取れなかったが、俺は腹を決めた。




「長老!」




「優!?」




突如、現れた自分に二人は驚いた様子だった。




「俺も行かせて下さい! 必ずや武功をあげます!」




「何を言ってるんだ、優!? 絶対に駄目だ、お前には早すぎる!」




アドニスの言葉に、蘭さんと彼のあの日の光景が再び強く、頭に過り、俺は凄い形相で睨み付け叫んだ。




「黙れ!! 俺はお前の舎弟でも何でもねぇ!勝手に決めつけるな!!」




今、思えば、どうして、あんな言葉が出たのだろう、、




アドニスは、沢山の優しさと想い出をくれたのに。。




「二人とも落ち着くのじゃ!! 良い、優、君も来るのじゃ。」




俺達のやり取りに気付き、数人が部屋からやって来て、やがて、二ツ星以上の黄金の騎士団達が召集された。




蘭さんを含む、11人の騎士達と獅子丸、長老、アドニス、そして俺、皆は例のホウキに乗り遂に出陣した。




人はいつだって過ちをおかす生き物だ。。




あの日、太陽の様に明るいアドニスが、とても悲しそうな顔をしていた。
















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4件


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R太郎

2023年10月30日

y.kato さん、いつも、読んで下さり、しかも、コメントまで、、、本当に嬉しいです! 本当にありがとうございます(*^^*) フフフ、何を隠そう、、私もとある駄菓子屋にて、、、フフフ! 次も速攻で載せるので是非是非、ご覧下されば、とっても嬉しいです(^^) R太郎(*^^*)



y.kato-channel

2023年10月30日

本当によく書けてる話ですよね! 好奇心を刺激する、 面白い作品だと思います! というか、 また読みに来ました! あなたもトラベラー? 岩瀬美里も?


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タイムマシーン @rocky4250

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