『俺達のグレートなキャンプ88 疲れている会社員キャンパーをアコギで癒そう』
海山純平
第88話 疲れている会社員キャンパーをアコギで癒す
山間の湖畔キャンプ場。午後3時頃。青空に白い雲がぽつりぽつりと浮かぶ絶好のキャンプ日和。湖面がキラキラと輝き、鳥のさえずりが心地よく響く
石川が両手を大きく広げ、深呼吸をしながらテンション高く叫ぶ。
「うおおおおお!今日もグレートなキャンプ日和だぜええええ!」
石川の声が山にこだまして、近くでテント設営をしていた家族連れがびっくりしてこちらを振り返る。お父さんが苦笑いを浮かべながら手を振ってくれる
千葉が荷物を下ろしながら、キラキラした目で周りを見回す。
「わあああ、石川さん!ここも素敵なキャンプ場ですね!湖が見えるなんて最高です!」
富山がため息をつきながら重い荷物を引きずっている。顔には既に疲労の色が見える。
「はいはい、今回はどんな突飛なことを思いついたのよ...まさか湖に飛び込むとか言わないでしょうね?」
富山の心配そうな表情。過去のトラウマが蘇るような不安げな眼差し
石川がニヤリと意味深な笑みを浮かべ、荷物の中からギターケースを取り出す。
「フッフッフ...今回の『奇抜でグレートなキャンプ』はこれだ!」
ギターケースを高々と掲げる石川。陽の光がケースに反射してキラーン!と輝く
千葉が目を丸くして驚く。
「え!石川さん、ギター弾けるんですか?!」
富山が嫌な予感を抱きながら眉をひそめる。
「まさか...まさかとは思うけど...」
石川が胸を張り、自信満々に宣言する。
「その通り!今回のミッションは『疲れている会社員キャンパーをアコギで癒す』だ!グレートだろ?!」
石川の周りに花が咲くような演出。本人は完全に酔いしれている
富山が頭を抱えて絶望的な表情を浮かべる。
「やっぱりいいいい!なんで毎回こうなのよおおお!」
富山の絶叫が山にこだまする。近くのキャンパーたちがざわめき始める
千葉が手をパチパチと叩いて大興奮。
「うわあああ!素敵です!僕も一緒にやりたいです!」
石川がニッコリ笑って千葉の肩を叩く。
「よし!千葉もやる気満々だな!富山も当然参加だぞ!」
富山が必死に手をぶんぶん振る。
「いやいやいや!私は楽器できないし、そもそも知らない人に話しかけるなんて無理無理無理!」
富山の顔が青ざめ、冷や汗がダラダラ流れる
石川が富山の手を取り、熱く語りかける。
「富山よ!キャンプの醍醐味は新しい出会いと発見だろ?疲れたサラリーマンを癒やすなんて、こんなにグレートなことはないぞ!」
石川の目がキラキラと輝き、まるで少年のような純粋な笑顔
千葉も富山の反対側から手を取る。
「富山さん!『どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる』でしょ?」
千葉の人懐っこい笑顔。富山を挟んで両側から圧をかけるような構図
富山がうなだれながら、観念したような表情で小声でつぶやく。
「...わかったわよ...でも恥ずかしい思いをしたら石川のせいだからね...」
富山の肩がガクリと下がる。まるで運命を受け入れた戦士のような悲壮感
石川が飛び跳ねて大喜び。
「よっしゃああああ!それじゃあまずはテント設営だ!設営が終わったら作戦会議だぞ!」
キャンプ場に石川の元気な声が響く。他のキャンパーたちがチラチラとこちらを見始める
1時間後。テント設営完了。石川たちのサイトは湖が見える絶好のロケーション。夕方の柔らかい光が湖面に映り込んで幻想的な雰囲気。
石川がギターを取り出し、チューニングを始める。
「さあ!作戦会議の時間だぜ!」
ポロンポロンと響くギターの音色。意外にも美しいメロディーが流れる
千葉が感動して目をウルウルさせる。
「石川さん...すごく上手じゃないですか!」
富山も驚いて口をあんぐりと開ける。
「え...意外と...というか、けっこう上手いじゃない...」
石川がドヤ顔でギターを弾きながら説明する。
「フッフッフ...実は大学時代軽音部だったんだぜ!でも最近は全然弾いてなかったから、キャンプで披露するのは今回が初めてなんだ!」
石川の指が軽やかに弦を弾く。周りの自然音と絶妙にマッチして、なんとも言えない癒やしの空間が生まれる
千葉が手をわくわくと振る。
「で、で!作戦はどうするんですか?」
石川がギターを抱えたまま立ち上がり、キャンプ場を見渡す。
「よし!あそこを見ろ!」
石川が指差す方向には、一人でテントの前に座り込み、スマホを見ながらため息をついている30代前半くらいのサラリーマン風の男性。疲れ切った表情で肩を落としている。その隣のテントには別の疲れたスーツ姿の男性。さらにその奥には残業で疲労困憊した様子の女性会社員も一人キャンプをしている
富山がその光景を見て、心配そうな表情を浮かべる。
「あ...確かにすごく疲れてる感じね...っていうか疲れた会社員だらけじゃない...」
千葉が同情的に頷く。
「みんな一人キャンプなんですね...きっと仕事が大変なんだろうなあ...」
石川がギターを構え、熱く宣言する。
「あの人たちこそ我々のミッションのターゲットだ!さあ行くぞ!癒やしミッション開始だああああ!」
石川が勢いよく歩き出す。ギターを抱えた姿は、まるで吟遊詩人のよう
富山が慌てて石川の腕を掴む。
「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなり行くの?!心の準備が...」
千葉も小走りで追いかける。
「あ、僕も僕も!」
三人がぞろぞろと疲れたサラリーマンの方向へ向かう。他のキャンパーたちの視線が集まる
疲れたサラリーマン・田中さん(仮名)のテント前。夕日がだんだんオレンジ色に変わり始める
田中さんがスマホを見ながら深いため息をつく。
「はあ...明日からまた会社か...せっかくのキャンプなのに全然リフレッシュできない...」
田中さんの肩が重く下がり、疲労感が全身ににじみ出ている
そこに石川たちが近づいてくる。
石川がにこやかに声をかける。
「こんにちは!お疲れ様です!」
田中さんがびっくりして振り返る。
「え?あ...こんにちは...」
田中さんの困惑した表情。急に声をかけられて戸惑っている
富山が石川の後ろで小声でつぶやく。
「きゃー恥ずかしい恥ずかしい...」
富山が石川の影に隠れるように身を小さくする
千葉が人懐っこい笑顔で挨拶する。
「お一人でキャンプなんですね!僕たちも同じキャンプ場にいるんです!」
田中さんが少し警戒しながらも答える。
「あ...はい...一人で来ました...」
石川がギターを前に出し、キラキラした目で提案する。
「実は!我々、疲れているキャンパーさんを音楽で癒やすミッションを遂行中なんです!もしよろしければ、ちょっとした演奏を聞いていただけませんか?」
石川の笑顔が太陽のように輝く。本気で相手を喜ばせようとしている純粋な気持ちが伝わってくる
田中さんが目を丸くして驚く。
「え...音楽で...癒やす...?」
富山が恥ずかしそうに頭を下げる。
「す、すみません...こいつがいつもこんな調子で...嫌でしたら全然断ってください...」
富山の顔が真っ赤になり、申し訳なさそうに縮こまる
千葉が田中さんの疲れた表情を見て、優しく微笑む。
「お仕事、お疲れ様です。きっと大変ですよね...」
千葉の優しい声音。田中さんの心に何かが響いたような表情の変化
田中さんがほんの少し表情を緩める。
「...はい...毎日残業で...やっと取れた休みなのに、頭の中は仕事のことばかりで...」
石川がギターを軽く弾きながら、温かい笑顔で答える。
「そういう時こそ、音楽の力を信じてみませんか?僕の演奏が下手だったら遠慮なく止めてくださいね!」
ポロンと美しい音色が響く。夕日とギターの音が絶妙にマッチして、なんとも言えない雰囲気
田中さんが少し考えてから、小さく頷く。
「...じゃあ...少しだけ...」
石川が大喜びでガッツポーズ。
「やったあああああ!それじゃあ、特別な癒やしタイムの始まりです!」
石川のテンションが最高潮に達する。富山が「やれやれ」という表情でため息をつく
夕日が湖面に美しく映る黄金の時間帯。石川がギターを構えて座る。田中さんが少し離れた場所に腰を下ろし、千葉と富山もその周りに座る。他の疲れた会社員たちも何となく集まってくる
石川が深呼吸をして、優しくギターを弾き始める。
静かで美しいメロディーが響く。石川オリジナルの癒やしソング。石川の意外な演奏技術に皆が聞き入る
田中さんの表情がほんの少し和らぐ。
「あ...この曲...なんだかとても綺麗ですね...」
石川が歌い始める。歌声も意外にも美しく、夕日の中に響く。
「この星には命がいくつあるだろう 命がいっぱい
不安なんて沢山 でも皆ここまで生き延びた
これからなんてわかんない でも夜空を見上げてごらん 星達が君を見守っている」
石川の歌声が湖面に響き、まるで自然と一体化したような美しいハーモニー
千葉が感動して小声でつぶやく。
「すごい...石川さん、こんなに上手だったんだ...」
富山も驚きながらも、どこか誇らしげな表情。
「...まあ、たまにはちゃんとしたことするのね...」
田中さんの肩の力が少しずつ抜けていく。音楽の力で心が癒やされていく様子
1曲目が終わると、田中さんが小さく拍手をする。
「...素敵でした...久しぶりに心が落ち着きました...」
隣にいた別の会社員男性も涙ぐみながら拍手する。
「ありがとうございます...なんだか胸がいっぱいになって...」
さらに向こうにいた女性会社員も目を真っ赤にしながら近づいてくる。
「す、すみません...聞こえてきて...とても綺麗な歌で...」
石川がにっこり笑って再びギターを構える。
「みなさん、お疲れ様です!もう1曲聞いていってください!」
今度は同じ歌をもう一度。今度はより感情を込めて歌う石川
会社員たちが次々と涙を流し始める。田中さんは声を上げて泣いている。隣の男性も肩を震わせて泣いている。女性会社員に至っては号泣状態
「うわああああん!なんで...なんでこんなに心に響くんですか!」
「僕も...僕も頑張って生きてきたんだ...うわああああん!」
「毎日辛くて...でも星が見守ってくれてるなんて...えーん!」
そこに、近くにいた他のキャンパーたちもだんだん集まってくる。家族連れ、カップル、年配のご夫婦など、様々な人たちがなんとなく石川たちの周りに集まり始める。みんな石川の演奏に聞き入っている
富山が慌てて周りを見回す。
「え、え?なんか人が集まってきてる...って、みんな泣いてるじゃない!」
千葉が嬉しそうに手をパチパチ。
「わあ!石川さんの歌で、みんな心が動かされてる!」
だんだん大きくなる観客席。石川の演奏を中心に、自然発生的な野外コンサートの様相。会社員たちの泣き声が響いている
石川が観客に気づき、さらにテンションが上がる...かと思いきや、急に真剣な表情になる。
「...みなさん...本当に...お疲れ様です...」
石川の声がいつもより低く、優しい。普段のハイテンションが影を潜めている
「僕も...昔は会社員でした...毎日が辛くて...でも、こうして自然の中で音楽を奏でると...心が洗われるんです...」
観客が静まり返る。石川の意外な一面に皆が聞き入る
「星空の下で...みなさんと一緒に...この時間を過ごせて...本当に...幸せです...」
石川の目にも涙が浮かんでいる。普段のお調子者の顔ではない、心の底からの感謝の表情
田中さんも完全にリラックスして、音楽に身を委ねている。
「...なんだか...すごく久しぶりに笑顔になれそうです...」
田中さんの顔に初めて自然な笑顔が浮かぶ。疲れた表情がほころんでいく
1時間後。完全に日が暮れ、星がきらめき始める。石川の即席野外コンサートは大盛況。30人ほどの観客が集まっている
石川が汗をぬぐいながら、最後にもう一度同じ歌を演奏する。
観客全員が一緒に歌い始める。キャンプ場全体が温かい雰囲気に包まれる。会社員たちは相変わらず泣いているが、今度は笑いながら泣いている
田中さんも一緒に歌いながら、涙ぐんでいる。
「...ありがとうございます...本当に...心が軽くなりました...」
田中さんの声が震えている。心の底から感謝している様子
演奏が終わると、大きな拍手が響く。
観客の一人、お父さんが声をかける。
「素晴らしい演奏でした!またやってくださいね!」
おばあさんも嬉しそうに話しかける。
「久しぶりに良い音楽を聞かせてもらいました。ありがとう。」
石川を囲む観客たち。みんな笑顔で感謝の言葉をかけている
しかし石川は、まだ感動的な雰囲気から抜け出せずにいる。普段のハイテンションな石川ではなく、しみじみとした表情で座り込んでいる。
「...みなさん...本当に...ありがとうございます...音楽って...本当にすごいですね...」
千葉が心配そうに石川を見る。
「石川さん...?いつもと何だか違いますけど...」
富山も困惑気味。
「あんた...大丈夫?なんか急にしおらしくなっちゃって...」
石川がゆっくりと立ち上がり、夜空を見上げる。
「...星達が...僕たちを見守ってくれてるんですね...」
田中さんが石川に深々と頭を下げる。
「本当にありがとうございました。おかげで仕事の疲れが全部飛んでいきました。明日からまた頑張れそうです。」
他の会社員たちも次々と感謝の言葉をかけてくる。
「本当にありがとうございました!」
「また歌を聞かせてください!」
「心が洗われました!」
石川が一人一人に丁寧にお辞儀をする。
「こちらこそ...皆さんの心に...少しでも寄り添えたなら...それが一番です...」
田中さんと石川の間に生まれた温かい友情。音楽を通じて心が通じ合った瞬間。しかし石川はまだ普段のテンションに戻れずにいる
夜9時。観客も散らばり、石川たちは自分たちのテントサイトでキャンプファイヤーを囲んでいる。星空がきらめき、湖面に月が美しく映っている
千葉がマシュマロを焼きながら、興奮気味に話す。
「今日は本当にすごかったです!石川さんの演奏で、あんなにみんなが喜んでくれて!」
富山もリラックスした表情で焚き火を見つめる。
「...確かに...今回は良いことしたわね...特にあの会社員の人たち、最初と全然顔が違ってたもの...」
石川がギターを抱きながら、相変わらずしみじみと空を見上げている。
「...やっぱり音楽には人を癒やす力があるんですね...改めて実感しました...」
三人の間に流れる温かく穏やかな時間。焚き火の炎がゆらゆらと踊り、心地よい沈黙が続く
千葉が心配そうに石川を見る。
「あの...石川さん...さっきからずっとしんみりしてますけど...大丈夫ですか?」
富山も眉をひそめる。
「そうよ...いつものハイテンションはどこいったのよ...なんか気持ち悪いわよ...」
石川がゆっくりと振り返る。目が潤んでいる。
「...僕...今日...本当に感動したんです...人の心に寄り添うって...こういうことなんですね...」
千葉が困惑する。
「え、えーっと...」
富山がイライラし始める。
「ちょっと!あんた本当にどうしたのよ!いつもの『グレートだぜ!』はどこいったのよ!」
石川が立ち上がり、両手を広げてゆっくりと回る。
「...星空の下で...皆さんと心を通わせて...僕は...僕は...」
千葉と富山が身を乗り出す。
「僕は...?」
石川が急に普段のテンションに戻る。
「僕はやっぱりグレートなキャンプが大好きだああああああ!」
千葉と富山がずっこける。
「うわあああ!急に戻った!」
「びっくりしたあああ!」
石川が思い出したように手をポンと叩く。
「そうそう!次回のキャンプはどんな『奇抜でグレートなキャンプ』にしようかな?」
石川がニヤリと意味深な笑みを浮かべる。
「フッフッフ...実はもう次のアイデアが浮かんでるんだ...」
富山が急に嫌な予感を抱いて身を乗り出す。
「え...まさか...また何か突飛なこと考えてるの...?」
石川が立ち上がり、大きく手を広げる。
「次回は『キャンプ場で即席そば打ち道場開催』だ!グレートだろ?!」
石川の目がキラキラと輝く。次なる冒険への期待に満ちている。完全にいつものハイテンション石川に戻っている
富山が頭を抱えて絶叫する。
「またかああああああ!そば打ちなんてできないわよおおおお!」
千葉が大喜びで飛び跳ねる。
「わあああ!面白そう!僕、そば打ち初めてです!」
富山の絶望的な叫び声が夜空に響く。しかし、その表情のどこか深いところには、少しだけ楽しそうな気持ちも隠れている
石川がギターを弾きながら歌うように言う。
「俺達の冒険はまだまだ続くぜ!グレートなキャンプ、万歳!」
焚き火の炎が高く上がり、三人の笑顔を照らす。湖面に映る月が、まるで彼らの友情を祝福しているかのように美しく輝いている
千葉と富山が声を合わせる。
「「万歳!」」
三人の声が夜空に響く。キャンプ場には平和で温かい時間が流れ、明日への希望と友情が星空の下で静かに育まれていく
翌朝、朝日が湖面に美しく反射する中、石川たちは撤収作業をしている。田中さんが挨拶に来てくれた
田中さんが清々しい表情で石川に握手を求める。
「昨日は本当にありがとうございました。おかげで最高のキャンプになりました。」
石川が力強く握手を返す。が、まだ少ししんみりモードが残っている。
「こちらこそ...また機会があったら一緒にキャンプしましょう...」
朝日に照らされた二人の笑顔。音楽を通じて生まれた友情が、新たな一日の始まりを告げている
富山が荷物をまとめながらつぶやく。
「...まあ...今回は成功だったわね...次のそば打ちは絶対反対だけど...」
千葉が元気よく手を振る。
「田中さん、お仕事頑張ってくださいね!」
石川たちが車に荷物を積み込む。キャンプ場には朝の爽やかな空気が流れ、新たな一日が始まろうとしている
石川が運転席に座りながら、振り返って言う。まだ若干しんみりしている。
「さあ...次のグレートなキャンプに向けて...そば打ちの練習ですね...」
富山が助手席で石川を見て心配する。
「ちょっと!まだ変よ!いつもなら『そば打ちの練習だぜええええ!』って叫んでるでしょ!」
千葉が後部座席から身を乗り出す。
「石川さん!もしかしてまだ昨日の感動から抜け出せてないんですか?」
石川がハンドルを握りながら、深くため息をつく。
「...みなさんの涙を見てたら...人生について考えさせられちゃって...」
富山がパニックになる。
「やだあああ!石川が哲学者になっちゃった!元の単純な石川に戻ってよおおお!」
千葉が必死に石川を元気づけようとする。
「石川さん!ほら!『グレート』って言ってみてください!」
石川がか細い声で答える。
「...ぐれーと...」
富山と千葉が絶叫する。
「「だめだああああああ!」」
車がゆっくりとキャンプ場を後にする。湖が朝日に照らされて輝き、鳥たちがさえずっている。しかし車内では石川のテンション低下問題で大騒動
富山が運転中の石川を揺さぶる。
「ちょっと!運転中に揺らすな危ないだろ!...あ、今普通にツッコんじゃった...やっぱり変よ!」
千葉が後ろから石川の肩をポンポン叩く。
「石川さん!そば打ちですよ!『俺達のグレートなそば打ちキャンプ89』ですよ!」
石川が少しだけ反応する。
「...そば打ち...確かに...面白そうですね...」
富山が頭を抱える。
「『面白そうですね』じゃないのよ!『面白そうだぜええええ!グレートだぜええええ!』でしょ!」
千葉がアイデアを思いつく。
「そうだ!石川さん、昨日の歌をもう一回歌ってみてください!」
石川が少し考えてから、車内で小声で歌い始める。
「この星には命がいくつあるだろう...命がいっぱい...」
歌っているうちに、だんだん石川の目に光が戻ってくる。
「不安なんて沢山...でも皆ここまで生き延びた...」
富山と千葉が期待を込めて見守る。
「これからなんてわかんない...でも夜空を見上げてごらん...星達が君を見守っている...」
歌い終わると、石川の表情が明るくなる。
「...そうだ!僕達も星に見守られながら、次のグレートなキャンプに挑戦するんだ!」
富山と千葉が期待する。
「そして次は...」
石川が急に立ち上がる。運転中なので危険。
「次は『俺達のグレートなそば打ちキャンプ89』だぜええええええ!」
完全復活した石川。富山と千葉が安堵のため息をつく。
「「やったあああああ!」」
しかし石川が運転中に立ち上がったので、車がふらつく。
「うわああああ!石川!運転中よ!」
「危ない危ない!」
慌てて座り直す石川。
「おっと!グレートすぎて忘れてた!安全運転、安全運転!」
三人の笑い声が車内に響く。次なる冒険への期待が高まっていく
1週間後。石川の部屋。そば粉が部屋中に散らばり、石川が粉まみれになってそば打ちの練習をしている
「よーし!今度こそ富山を驚かせてやるぞ!グレートなそば打ちキャンプの準備は万端だ!」
窓の外では千葉が「石川さ〜ん、練習しに来ました〜!僕もそば打ちやりたいです〜!」と元気な声で呼んでいる
一方、富山は家で「絶対行かない!そば粉でアレルギー起こしたらどうするのよ!」と布団をかぶって震えている
電話が鳴る。富山からだ。
石川が粉だらけの手で電話に出る。
「はいはい、石川です!」
「ちょっと石川!千葉から聞いたけど、本当にそば打ちキャンプするの?!」
「当然だぜ!グレートなそば打ちで、今度は和のおもてなしだ!」
「やだああああ!そば打ちなんて難しいでしょ!失敗したらどうするのよ!」
「大丈夫大丈夫!失敗も含めてグレートなキャンプさ!」
電話越しに富山の絶叫が聞こえる。
「絶対嫌あああああ!」
石川がニヤリと笑う。
「でも富山、君がいないとグレートなキャンプにならないんだ...」
「...う...それは...」
富山の声がだんだん小さくなる。
「みんなでそば打ちして、美味しいそばを食べて、きっと楽しいキャンプになるぞ!」
「...わかったわよ...でも失敗したら石川のせいだからね...」
「やったあああああ!それじゃあ来週の準備だ!グレートなそば打ちキャンプ89、始動だぜええええ!」
次回の冒険への予感を残しながら、物語は幕を閉じる
『俺達のグレートなキャンプ』シリーズ、第88話完結。次回、第89話『そば打ち道場で大騒動!?』に続く...
【エピローグ】
石川がそば粉をこねながら、一人でつぶやく。
「グレートなそば打ちで、今度はどんな出会いがあるかな?」
しかし石川の足元では、練習で失敗した真っ黒に焦げたそばの残骸が散らばっている
「...あれ?なんで黒くなってるんだ?そば打ちって、こんなに難しかったっけ...?」
石川の不安な表情。次回のキャンプに暗雲が立ち込めている
おしまい# 俺達のグレートなキャンプ88 疲れている会社員キャンパーをアコギで癒そう
『俺達のグレートなキャンプ88 疲れている会社員キャンパーをアコギで癒そう』 海山純平 @umiyama117
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