画面の中と外と層（そう）

エピローグ

「ねぇ。私たちの戦（たたか）いが終（お）わったら、そのあとはどうする？」

　相棒（あいぼう）が私に話（はな）しかけてきた。モニターの外（そと）では、操作機（コントローラー）の連射（れんしゃ）装置（そうち）が解（かい）除（じょ）されたとわかる。目標（もくひょう）としていたレベルに、私と彼女（かのじょ）は到（とう）達（たつ）したのだ。まだ戦（たたか）いの旅（たび）は続（つづ）くが、この島（しま）での戦闘（せんとう）は、ひとまず終了（しゅうりょう）である。

「そうだねー。宿屋（やどや）で眠（ねむ）って、それから美味（おい）しいものを食（た）べたいね。これから宿屋（やどや）には向（む）かうけど、そういう短期（たんき）の宿泊（しゅくはく）じゃなくて、長期（ちょうき）滞在（たいざい）するの。もちろん、二人（ふたり）でね」

　未来（みらい）がどうなるかはわからない。魔王（まおう）軍（ぐん）を倒（たお）せることは知（し）っていても、その後（ご）の人生（じんせい）までは攻略（こうりゃく）法（ほう）などないのだ。愛（いと）しい人（ひと）との日常（にちじょう）こそが全（すべ）てなのだと私は思（おも）っている。

「これまでに、やったことがないことをしようよ。結婚（けっこん）とか離婚（りこん）とかさ」

「そうね、離婚（りこん）はしなくてもいいけど。どちらかが寿命（じゅみょう）を終（お）えるまで一緒（いっしょ）にいて、長（なが）く生（い）きたほうがお葬式（そうしき）をして。思（おも）いっきり泣（な）いて、その後（ご）もできれば、思（おも）いっきり笑（わら）って世（よ）を去（さ）りましょう。約束（やくそく）よ」

　島（しま）の砂浜（すなはま）から、停泊（ていはく）させていた私たちの船（ふね）に乗（の）り込（こ）む。出航（しゅっこう）して、すぐに島（しま）は見（み）えなくなった。次（つぎ）の目的（もくてき）地（ち）は少（すこ）し遠（とお）いので、到着（とうちゃく）するまで私たちは客室（きゃくしつ）で楽（たの）しむことができる。

　よく知（し）らないのだが、モニターの外（そと）では『縛（しば）りプレイ』というものがあるらしい。私たちが二人（ふたり）だけで世界（せかい）を救（すく）う羽目（はめ）になっているのも、そういうプレイのせいらしかった。大変（たいへん）ではあるが、二人（ふたり）旅（たび）のおかげで私と相棒（あいぼう）は仲良（なかよ）くなれたのだから、特（とく）に文句（もんく）もない。縛（しば）るのも縛（しば）られるのも私は好（す）きで、世界（せかい）を救（すく）ったあとも、色（いろ）んな意味（いみ）で私たちは互（たが）いを縛（しば）り合（あ）いたいと思（おも）う。

　私たちの世界（せかい）が、セーブデータという層（そう）で時空（じくう）が分（わ）かれているのと同様（どうよう）に。モニターの外（そと）の世界（せかい）も、いくつかの層（そう）に分（わ）かれているのが私には見（み）える。バッドエンドや行き止まり（デッドエンド）があって、想像（そうぞう）力（りょく）さえあれば、悪（わる）い未来（みらい）を避（さ）けることは可能（かのう）だ。優（やさ）しさと協調（きょうちょう）を選択（せんたく）肢（し）として、外（そと）の世（せ）界（かい）が良（よ）い未来（みらい）へ辿（たど）り着（つ）くよう、私は願（ねが）っている。