人間ではないからこそ、より人間らしい。この『人生讃歌』を応援したくなる

 この生活臭さ、そして人間臭さが本当に愛おしい。

 主人公の『レイラ』は究極で完璧なアイドル、という某歌詞が似合いそうな存在です。
 彼女のパフォーマンスには世の中の『穢れ』を浄化する力さえ備わっている。

 そんな彼女の正体は人間ではなく、陰陽時の賀茂が使役する「式神」となっている。

 指をパチンと鳴らせば術が解け、もともとの媒体となった紙などに変わってしまう。
 そんな「虚構」であり「創造物」に過ぎないような彼女。

 でも、そんなレイラと賀茂のやり取りは、実に人間臭く、同時に生活臭くもある。

 毎日の食事へのこだわり。式神だって食事をするし、美味しいごはんを食べれば感動もする。そうして焼肉を二人でつっついたり、「陰陽師はタレしか味わわない」なんてこだわりを賀茂が語ってみせたりもする。

 その命が本物であろうが偽物であろうが、「人生」を楽しむことに関しては違いなんてない。
 そんな賀茂とレイラのやり取りが、なんとも微笑ましく、二人の姿を見ていることで「生きている」ということの尊さとか、世の中にはたくさん楽しいことがいっぱいあるのだということを改めて気づかされます。

 人間ではない彼女たちの姿を通すことで見えてくる、「生きること」の楽しさ。式神としての「使命」をこなしつつ人生を楽しむことも忘れない。そんな姿を見ることで、本編を紐解く読者の心も「浄化」されて行くこと間違いなしです。

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