15

「私、ごはん作るの手伝えなかったから、洗い物するよー」

「私も、するよ。バイト代、がっつりもらうからね。完璧にきれいにするよ。二人は座ってテレビでも観てな」


 僕とひかりは言われた通り、リビングのソファに腰を下ろした。

 リモコンを手にして、僕はテレビをつけた。チャンネルめぐりをしても、特に観たい番組はやっていない。

「ひかり、何か観たいものある?」

「ううん、別に」

 結局、ニュース番組にしてしまった。

 なんとなく眺めていたら、ちはやが盆を持って現れた。

「はい。紅茶。ひかりちゃん、砂糖入れたけど、いいよね?」

「うん。ありがとう」

「ミルクいる?」

「ううん、大丈夫」

 マグカップが、テーブルに二つ並べられる。

 ちはやが盆を持って戻ろうとして、

「あ。そう言えばさ」

 と、テレビに目を向けた。

「何?」

「お兄ちゃん、昨日もここでテレビ観てたよね?」

「うん」

「天気予報のとき、明日は突然の雨になるかもしれないって聞いて、明日は傘持ってかなきゃなあって言ってたよね」

「そう言えばそうだな」

「なんで傘持ってかなかったの?」

「忘れてた」

「本当は、ひかりちゃんをずぶ濡れにしたかったんじゃないのお?」

「ばっ、ちがうっ」

「あはは!」

 ちはやは、キッチンへと戻って行った。

「ひかり、ちがうぞ。そもそも一緒に帰ることになったのは、偶然だしっ」

「そんなの、分かってるよ(※ちょっと笑う感じで)」

「そ、そっか」

 ひかりはマグカップを手に取って、一口飲んだ。

 僕もそうした。部屋にはクーラーがよく効いているから、あたたかい飲み物がちょうどいい。

 二人とも、マグカップをテーブルに置く。二人とも、テレビに目を向ける。


 明日の天気は――(テレビの声)。

 テレビが天気予報を始めた。

 ――突然の雷雨に注意を――。


「またか。明日は傘、忘れないようにしないとな」

「忘れていいよ。私は持ってくから」

「なんだよ、俺はずぶ濡れで帰れってこと!?(笑)」

「ちがうよ」

 ひかりはちょっと怒ったように言った。「入れてあげるよ。また一緒に帰ればいいんだから」

「あ、ああ、そっか」

 僕の声は、なんだか間が抜けていた。

 すると、ひかりは、右手と口元を、僕の耳に近づけた。


(小声)

「分かってる? 相合傘、しよってことだよ」


 ♪ キラキラ


 うん。

 と、僕が頷くと。

 ひかりは、うれしそうに、恥ずかしそうに笑って。


 ♪ キラキラ キラキラ


 なんだか、最高にかわいかった。







 ♪ キ

 ラ

 ラ

   ァ

     ン



(ひかりの声)


 ねえ。

 君って、ときどき、きらきらしてるよ。

 いつもじゃないよ。

 ときどきだよ。

 でもさ。

 私、優しい君が、いつも、大好きなんだよ。



                        終わり

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雨とシャワーと、ひかるキミ ヤマメさくら @magutan

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