心優しい悪魔と謎の旅人が紡ぐ、希望を探す物語

魔王が倒され平和になったはずの世界を舞台に、物語は穏やかな出会いから始まります。

飄々としていながらも圧倒的な実力を持つ主人公ウェインと、悲劇に見舞われた少女の体に宿ることになった心優しい悪魔イタルカ。この二人に、口は悪いが重要な知識を持つ魔導書グランワーズが加わった、個性的で魅力的なキャラクターたちの掛け合いが物語に彩りを添えています。

序盤の穏やかな雰囲気から一転、緊迫した逃避行へと進むストーリー展開は非常にテンポが良く、彼らがなぜ追われるのかという大きな謎が先を読ませます。読みやすくリズミカルな文章で描かれており、ファンタジーの王道的な安心感と、「心優しい悪魔」や「魔王の遺した魔導書」といった独自の設定が巧みに融合しています。

悲しい出来事から幕を開けますが、絶望の中に差し込む一筋の光のように、主人公の存在が希望を感じさせ、これから始まる二人の旅路を見守りたくなる、そんな期待感に満ちた読後感でした。