悪しき実の裂けるが如く。


 あしきみのさけるがごとく。

白い花々が、葉陰に揺れる。

雨笠を深く被った男が一人、山路を征く。
樒の花が、撓わに咲いては密やかな笑みを
向ける。その男の耳元で、少女の聲が。
 谷底へと誘う様に囁くが。

難を逃れた男の耳元に。

   冷たい、嘲笑う様な。それでいて

     恨む ような。

それは旅人を谷底へと誘う 怪 の聲。
親切を装い、破滅へと導く。あな恐ろしき
魔性であろうか。


 余程に豪気の者が現れるのは

         更に先のはなし。

 

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