囁き峠
二ノ前はじめ@ninomaehajime
囁き峠
「その木を右に曲がって」
「次は左」
「おお、左だな。ありがとうよ、親切なお嬢さん」
「そのまま真っ直ぐ」
心の片隅で違和感を覚えた。自分は一体、ここで何をしている。思考が追いつくより早く、足が動く。日差しが強くなってくる。
「もっと先」
少女の声が誘う。足が動く。光に目が
樹林が切れて、視界が晴れた。ほぼ同時に我に返り、旅人の男は
その耳元で「あはっ」と笑う声が聞こえた。
「死ねば良かったのに」
その峠は
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