カウントダウンが終わったら、俺は別の家にいた

赤とんぼ

第1話

「飲みに行ったら妻が文句を言う。家庭を優先すべきか? 上司は毎日叱ってくる。ニュースは暗い話ばかりで、頭がおかしくなりそうだ。絶対に俺がミスしないで、失敗しないで、楽しくて、毎日生きられる方法を考えて教えろ」

深夜、ベッドの脇に置いたアレクサにそう問いかけた。

しばらく沈黙があり、機械とは思えない低い声で返ってきた。


「カウントダウンを始めます」


数字はゆっくりと減っていく。止めても進み続け、やがて「ゼロ」を告げた瞬間、部屋の灯りがふっと落ちた。

耳が詰まるような静けさ。意識が沈んでいく感覚。


次に目を開けた時、俺は知らないベッドにいた。

隣の部屋からは、子供の笑い声と食器の音が聞こえる。

ドアを開けると、見知らぬ家族が食卓を囲み、全員が笑顔でこちらを見た。


その時、玄関が開く音がした。

スーツ姿の営業マンが入ってくる。それは俺だった。

そいつは家族の方を向き、低い声で言う。

「……ありがとうございました」

そいつは笑っていた。

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カウントダウンが終わったら、俺は別の家にいた 赤とんぼ @ShiromuraEmi

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