つながる

金曜日

第1話

「なんか花火の音せん?」

「今日雨なのにね。お祭りかな。」

三連休初日の夜、こどもたちとリビングでそんな会話をしていた。


我が家はファミリー向けマンションの角部屋だ。素敵な夜景が見えそうだと思って購入したものの、すぐそばにある山に邪魔されてお祭りで打ち上がる花火はほとんど見えない。


「見えんと思うけどね。」

興味なさそうな声で中学生の息子・光が言う。


「まあいいやん、一応見てみる?」

小学生の娘・藍に話しかけると、

「見る!」

と目を輝かせながら言った。


何の期待もせずカーテンを開ける。さっき興味なさそうにしていた光も見に来た。

—ほら、何もない。


「やっぱり見えなかったねぇ。」

私は残念そうな顔で藍に話しかける。

「見たかったぁ〜。」

なんとか見えないかと、ぴょんぴょんとジャンプをする藍を尻目に

「早くカーテン閉めてくれん?外から丸見えなんやけん。」

と冷たく言い放つ光。

「田舎やしこんな時間に誰もおらんよ。光くんも見たそうにしてたくせにね。」

私は笑いながらカーテンを閉めてこの話を終わりにした。


「ふたりともアイス食べる?バニラやけど」

「藍は食べる!」

「お母さんたまには気が利くね、俺も食べる。」

「はい、藍ちゃんどうぞ。光くんは偉そうやけんもう自分でアイス取りに来て。」


私はとにかくいつもの会話を続けた。さっき見たものを頭の中から追い出したかった。

「やっぱり見えなかったねぇ。」

といいながら、私は山の中から大きな口を開けて笑いながらこちらを見る、男とも女ともわからない何かを視界に捉えていた。


自分で冷蔵庫にアイスを取りに行った光は、ソファーに移動した後、カーテンの閉まった窓をずっと見ている。


「こら、ソファーで食べたらソファーが汚れるやろ。テーブルで食べてよ」


私の声に反応して振り返った光は、光ではない誰かの顔で

「●●●●」

聞き取れない言葉を発し、またいつもの光の顔に戻って

「はぁーい」

と面倒くさそうにダイニングの椅子に腰掛けてアイスを食べ始めた。


私は咄嗟にテレビの電源を入れた。歌番組が放送されている。知らないアイドルが歌う知らない歌を何曲か聴き終わったところで、自分もアイスを手に持っていたことを思い出した。


「お母さん何しよん?アイスどろどろやん」


光の声がした。私は顔を上げることができなかった。









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つながる 金曜日 @ktrts18

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