高校3年の夏

サクヤ

高校3年の夏

 高校3年の夏、朔夜には彼女がいました。


 台風で休校になる時に、その子は朔夜の連絡網の後ろにいました。


 その時の連絡を機にメールのやり取りが始まった。


 当時の朔夜はその連絡が面倒だと思いつつも、無碍に出来ないと思って適当に返してました。


 駅で待ち伏せされ、告白され、なんとなく付き合い始めたけど、朔夜には情熱がなくて。


 毎日送信してくる他愛のないメール。どうでもいい電話を夜遅くまでして、面倒だと思っていたそれらの対応がいつの間にか日常になっていく。


 バイトもしてなかったから公園とか、映画とか、ファミレスとか、お金のかからないデートばかりだった気がする。


 お互いに社会人になって、会社の歓迎会の為に街に出かけると、彼女はスーツを着こなしたカッコいい男の人と腕を組んで歩いていた。


 面倒だと思っていた日常が、手のひらから零れ落ちていて、空になった時にそれが大切なものだったことに、遅れて気が付いた。


 朔夜という存在は、その時その瞬間にいつも気付かない。


 取り戻せないほどに遅れてようやく理解する。

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高校3年の夏 サクヤ @sakuya_a

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