第18話語らなくてはならない


前回のあらすじ




ルーズリールは「ここに残りたい」と必死に頼んできた。


本来なら追放するつもりだったが、彼女の持つ 透視スキル があまりにも便利すぎたため、仕方なくパーティに加えることに。




こうして、勇者誠・ハイドル・レックス、そして瓶詰めトカゲ姿のルーズリール。


奇妙な4人パーティは、新たな使命―― 転生者狩り へと向かうのだった。




本文

「なんで!あんた透視できないのよ! 今まで馬鹿みたいにチート使いまくってたじゃない!」


ルーズリールが瓶詰めの姿から、大声で俺に怒鳴りつけてきた。




確かに、俺は大抵のことなら何でもできる。できないことより、できることの方が圧倒的に多いタイプの男だ。


──だが、こればかりは事情がある。




話は転生する直前にさかのぼる。




目の前に現れたのは、胸のやたら大きい女神だった。彼女は微笑みながら告げる。


「あなたにチートの力を授けます」




俺は即座に断った。


「女神様、俺だけ努力せずに力を手にするなんてできません」




なんと模範的で常識的な答えだろう。


だが女神は俺の心をあっさり見透かしてきた。




「……本当は、スライムやゴブリンに弄ばれたい願望でいっぱいでしょう?」




見抜かれていた。


仕方がない。どうせ断っても無理やり押しつけられるのだ。俺は観念して能力を受け取ることにした。




「で、どんなチートなんですか?」


それが重要だ。もししょぼい能力だったら、わざと負けて願望を満たせばいいだけだし。




女神はにっこり笑って答える。


「あなたの能力はとてもシンプル。──興味に比例して、スキルを習得するための必要ポイントが変わります」




なるほど。俺が欲しいと思えば思うほど、必要ポイントがどんどん増えていくという仕組みらしい。


逆に興味が薄い戦闘スキルなんかは、わずか一点で取れてしまう。




「いい能力じゃないか」


そう思った矢先、女神がさらりと付け足した。




「ちなみに、必要ポイントがゼロのスキルは自動的に取得されます」




……は?




気づけば俺の頭の中には、いらないスキルが山ほど刻み込まれていた。




「自動防御」「洗脳耐性」「剣聖」「魔法の極意」「聖域展開」……。




俺は頭を抱えた。


「いらねぇよ! そんなの取ったら“まともな勇者”になっちまうだろ! 俺は男を透視したいんだ! 理想の筋肉を丸裸にしたいんだよ!」




こうして、俺の“チート能力”は始まったのである。


ーーーー




俺は目を覚ましたレックスに事情を説明して、仲間に引き入れようとした。




「そんな感じで世界がピンチだから、助けて欲しい。それに──弟に再び会えるかもしれないんだ。悪くない話だろ?」




……よし、今のところクールに決まってる。このまま“まともな常識人”として好感度を稼げば、自然と仲間に──




だがレックスは首を振った。


「俺じゃ役に立たねぇよ。それに、この村が大切だし」




確かに、長い間住んでいた村だ。思い出があるのは当然……そこまで考えてなかった俺が少し恥ずかしい。




「例えば、隣の橋にいたマイナさんは──」




……うん? そうか。こいつ、橋の下暮らしだから“隣の家”じゃなくて“隣の橋”なのか。




「マイナさんは優しい人でな。礼儀正しくて、俺の橋に来た時は靴を揃えてから入ってきてくれるんだ」




橋の下に“家”として入るのに、土足かどうかってそんな重要?




「他にも、ご飯のときには緑に変色した魚を分けてくれたし──」




いやそれ腐ってるだろ!?




「村の人たちだって、『レックス、犬のものまねをしたら飯やるぞ』って言ってくれるんだ。……いい村だよ」




──この村、ろくな奴いねぇな


ーーーー




どうする……どうにかしてレックスを仲間にしないと。


こうなったら最終手段だ。




(ハイドル、ハイドル聞こえるか?)


俺は脳内通話をつないだ。




(ああああ、またこれか。今度は俺に何しろってんだよ)




俺のお願いはシンプルだった。


(ハイドル、お前、感じのいい“弟ムーブ”して、レックスを勧誘してこい。──期限は1日以内な)




(ふざけんな! 魔王様だって期限は話し合いで決めてくれるのに!)




俺は少し考える。


(……魔王様って意外と優しいんだよな。昔の会話を思い出すよ。確かに所々で人柄……いや、“魔王柄”の良さが滲み出てる。さすが一種族をまとめるだけはある。人間ができてる──いや、魔王ができてる)




(いちいち言い直すな! うざいんだよ!)




(しかしいいのか? 俺は悪魔だぞ。契約の代償は重い……)




俺は目をつぶり、覚悟を決めた。


(今から俺のシンデレラストーリーが始まるんだ。さっさとやれ!)




(シンデレラは女だし、契約相手は魔法使いであって悪魔じゃねえ!!)


ーーーー




ハイドルがレックスに近づく。


夕焼けの川を眺めながら、物思いにふけるレックス。……だけ見れば感動的な場面だ。




──ただ、ここが“橋の下の家”だという事実が、妙に雰囲気を台無しにしている。




だが俺には秘策があった。


青春アニメやドラマ、小説の名セリフを片っ端からインプットしてある。


今のハイドルは感動的なセリフの一つや二つ、軽く口にできるはずだ。まさに感動生成機。




「感動って、それ本当に機械的なものなのかしら」


瓶詰めのルーズリールが茶々を入れるが、無視だ。




夕焼けに照らされ、ハイドルの赤髪が燃えるように輝く。


俺とルーズリールは“ハイドル推し”という点で一致していたので、並んで写真を撮っていた。




……が。




ハイドル「う、うう、あわ、く……」




……様子がおかしい。




「ちょっと、あんた。インプットしたデータってどのくらいの容量よ?」


ルーズリールが訝しむ。




「そうだな。1000ページくらいの辞書があるだろ? あれを百冊分くらいだな」




「完全に送りすぎじゃない! 脳がパンクしてるわよ!」




「いやいや、別に大した情報は送ってないぞ。ただ……俺の脳内記憶完全再現を使って、昔の五感すべてをそのまま送り込んだだけだ」




瓶の中でルーズリールが大暴れした。


「あんた完全に失敗よ!!!」




俺は自覚してしまった。普段は無自覚チートなんてしない俺だが、このときばかりは──




「俺……何かやっちゃったかな?」

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異世界チートでハーレム築いたけど、すいません。男が好きです @1885

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