第37話 海月蜘蛛


 花蜘蛛、と言う種類らしい。


 別名は海月蜘蛛。


 正式名称は長くて覚えていない。


 タランチュラの腹部が透明な袋になって、宙に浮いている、そんな感じ。


 それは案外と群れていて、だいたい五・六匹で活動しているみたいだ。


 毒はなく、また獰猛性もない。


 そのかわり、野生なのに人慣れしているせいで熟れて皮を剥いたバナナを好む。


 食べる量もほどほどで、どうしたらいいのかよく分からない。


 駆除してこい、とステーションに言われた。


 しょうがないと思っていたが、対面してみると妙に可愛い。


 危険を察知すると透明な部分がネオンみたいに光りだすから、便利だと思う。


 

 仕事を終えて、帰宅してしばらくしてからのこと。


 二度とステーションでの仕事はないらしい。


 リビングのソファに腰掛けると、花蜘蛛たちが近寄ってきた。



 どうやら散歩の催促らしく、はいはいとヒモをくくって風船みたいになる。


 最近気づいたが、こいつら人語がちょっと分かる。


 

 ネオンの光にいちいち警戒して光だすので、盗まれそうになったりする。


 どうやらサイバーパンク系の風船の新作だと思われているらしい。


 ちなみに俺が住んでいるのはネオン街だ。



 これから交配期とかに入ったらどうしよう?


 不安だから書き出してみた。


 繁殖力を抑えるかわりに愛玩を選んだ種族だとウィキにあった。


 それを知った輩が、妙に増やして駆除の『対象』になったらしい。


 ステーションでの話だ。



 まだまだ地上では、珍しい光る風船だと思われている。

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ファンタジー短編集さぷりぷらぐ 猫姫花 @nekoheme_hana

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