第36話 生えてくる聖堂
案内されたのは荒涼とした土地で、どこまでもひとのいない風景。
背の高いのは崖岩くらいで、低木はちらほら見かけた。
崖に挟まれた道を歩いていて行き止まりで、ふと空を見上げる。
青空に、崖を加工したシャトルがいくつもある。
そして案内役が崖肌に現われた紋様に隠されたスイッチを押す。
すると勢いよく地下からはえてきた。
門と塔が、だ。
崖の成分でできている立派な塔が急に生えてきている。
圧巻して思わずたじろぐ。
そしてその城門は厳かに開き、私を招いた。
案内役が「ここで待っていますので」と言う。
緊張して一歩踏み出して、門を抜けて、崖でできてる塔の内部に入る。
そこは明かり取りで案外と明るい場所。
そしてどこかなつかしい見たことがあるような教会を思わせた。
多少警戒しながら進み、そして芯間。
青い光の粒が舞っているが、これは吉兆の証。
芯間に発光百合が咲いているからその花粉だ。
幻想的な光景に、自分を意識して、芯間の『剣』に近づく。
革でできた手袋越しの手に力が入って、ギシュリと音がした。
深呼吸をするとマイナスイオンの多いこの空間に感謝したくなった。
黒とピンクでキメたドレス姿で、黒主之宮芯間月姫に挨拶をした。
すると剣はふと消えて、そして気づくと手元が握っていた。
剣に選ばれた。
世の中への不満を堂々と言いたいから最善を尽くすために来ただけだったのに。
そして対となる『月王子』はすでに君を待っている状態だ、と案内役に言われた。
あの噂の英雄と、これから手を組むことになるらしい。
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