いざ渓谷

ジャングルに着いた俺は、親父の手記を見ながら、目的の位置を目指した。


 数日かけて目的の地に着くと、手記に書かれている通り、蔓で峡谷が隠されていた。


「これ、気付かないで落ちた人いたんじゃ……」


 比較的緩やかな道を見つけて、多少の恐怖心と、大量の好奇心を抱えて、渓谷を降る。


 渓谷を降りると、すぐに気付いたことだ。

 渓谷の全てに、苔らしきものが生えていることに。


「なんだ?これ」


 苔ぽいが、模様に近いほど薄く、くっついている。

 一歩一歩慎重に渓谷を降る。


 しばらく降りて、中層ぐらいの時に上を見上げると、蔓のカーテンが出来ていて、隙間から光が漏れ出していた。

 その光が下にまで届き、驚くほどに綺麗だった。


 親父はいつもこんなのを見ていたのだろうか。


 また歩みを進めながら、渓谷を降りていく。

 

 そして、ついに最下層に着いた。

 最下層でも案外明るく、夕暮れ程度の明かりがあった。


 準備してきた懐中電灯と、ランタンは使わないかな?


 そんなことを思っていると、奥から謎の生物が見えてきた。

 ワームのような体というか、ワームそのもののようだった。


 大体1mぐらいあって、茶色とグレーのシマシマ模様だ。


 俺はつい、気になって近くへ恐る恐る近づく。

 だけど、そのワームは反応するどころか、渓谷についた苔らしきものを食べている。

 どうやら、植物しか食べないようだ。


 俺が持っていた雑食のワームじゃなくて、一安心する。

 ワームをよく観察すると、直径が大体30㎝ぐらいあるのが分かる。

 皮膚は蛇のようで、滑りやすそうだ。


 ワームが食事を終え、その後を見ると、緑色の液体が垂れていた。

 所々透明な液体なことから、この苔みたいのを溶かして飲んでいるのだろう。


 「酸じゃね?」


 植食だからと言って、油断はできないか。

 この渓谷は面白い。


 俺はますます渓谷のことが知りたくなった。


 さて、次はどんな生物がいるのかな?

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渓谷の境界 東井タカヒロ @touitakahiro

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