海は、主人公以外の村人を連れて行ってしまい、そのまま静かにして動かない。
主人公は、不思議な影とともに舟を使って山のような海を登ろうとするのですが……。
「海が立ち上がってこちらを見ている。」
本作の始まりであるこの一行から、完全に心を鷲掴みにされました。
幻想的なイメージが織りなす物語ですが、描かれる内容はとても残酷なものです。
途方もない理不尽さに打ちのめされた時、それを乗り越えることは容易ではありません。
ですが、主人公の経験を通して、人の心、魂にとって何が大切なのか、教えられたように思います。
短編とは思えない傑作です!
是非ともお読み下さい!!!
海は、空の彼方にある宇宙の広がりと
同じぐらい未知の世界であると聞いた事が
ある。この地球上の約七割を占める
巨大な水は、安らぎや糧を齎すだけでなく
時には抗う事の出来ない脅威ともなる。
海は黙示して、只波の音のみ響かせて。
足元には瀕死の魚が口を開けて、乞う。
海の彼方へと投げてやるが、自らは一体
何を乞うというのだろうか。
影が、纏わりついて離れない。
大海原は根源的な恐怖を齎すが。もう既に
それも荒濤に洗われて奪い去られて行く。
作者の幻想的で不穏な寓話は、畏ろしくも
厳かな空虚に紛れ、圧倒的な感慨と映像を
呼び起こす。
海は、恐ろしくも優しい。
万物の母なるもの。
これは絶望の先にある光の物語。