中学一年生。
楽しさと共にたくさんの不安が増す、自分と周りのことだけで精一杯の頃でしょう。
当たり前にある世界がいつか壊れるのではないかという、わけの分からない不安。
一歩離れたように冷静に現実を見る目。
願えばもしかしたら夢のようなことが起こるかもしれないと期待する心の片隅。
大人に近付いているけれど、まだまだ大人じゃない。
そんなアンバランスさが、作者様の透明で繊細な表現で描かれます。
もう何度も胸をギュッと締め付けられました。
これから大人になろうとする子供たちに、もっと力を抜いて、周りに頼っていいんだよという優しいメッセージを感じます。
多くの方に読んで頂きたい一作です。
とても素敵な物語です、そしてそれだけでは語れない想いが溢れています。
素敵な物語、僕がそう感じるものはたくさんあって、でも世界に溢れている物語の中ではほんの少しだけです。
例えば、文学を「加点」方式で読み取る悲劇を僕は思います。
読解力というのはとても理知的なセンスを必要とします。それゆえに理知的な足場で作品を捉え、分析し経験と知識で統合する事により、その「加点」で評価し文学という作品の「読み取り」を行ないがちなのです。
それはまるでバーコードリーダーの様。
読解力の悲劇というのは、本を読めば読むほど、ある意味とても独善的かつ模範的な理性の定型でしか作品を読めなくなってしまうものです。恐らくこれは多くの公募においても同様で、寸評などという選者の理性を見るに、その高度な限界点までしか「作品の評価」が出来ません。
馬鹿だなぁって思います。
ですが、時折そうではない「読み取り」がされている公募もあります。そういう選者はなんで読み取っているかと言えば、
心です。
僕は物語を出来るだけ、まっさらな心で読む様に心がけています。
物語とは筆者ですら気づき得ない領域まで、深く、深く、読み解く事も可能なのですが、そんな「読み取り」は本来不要なのです。
大事なのは心です。
さて本作ですが、そういう僕の心にまっすぐ届き、そして響き、鳴りやまない鐘の音を鳴らし続ける、とても、とても、大切な「素敵な物語」でした。
お勧め致します。
出来る限り多くの人に読んで頂きたいです。「読んでよかったぁ」って笑顔になって貰いたいです。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)