緊急入院と手術とお経<ショートショート>

坂道冬秋

緊急入院と手術とお経<ショートショート>

 私は、一年程前にある病気になった。それ以来、この病院に通院している。五月の終わりに体調を崩した。食事がほとんど食べれない状況だった。ウィダーinゼリーのような物で何とかしのいだ。しかし、病状は悪化していく。もっとも、安静にしていれば、なんとか生活がおくれる程度だった。


 ある日、自分が急激に痩せているのに気付いた。食事を無理にとろうとしたが、あまり受け付けない。それ以前に、食事を用意するのが億劫だった。それだけ、体力がおちているという事だろう。数日後に通院する日だ。その時に相談しよう。前に通院した時に、状況次第で入院も考えられるとも言われていた。入院になるかもしれない。いや、まず間違いなくなるだろう。とりあえず、予約した通院の日まで、様子をみよう。





 予約した通院の日、なんとか身体は動く。シャワーを浴び、用意をする。一応、入院になってもいいように、準備だけはしておこう。私は、タクシーに乗り込み病院に向かった。病院についても、自分だけで動けない。タクシーから警備員の人に助けてもらいながら下りる。自分一人では歩けなくなっていた。車イスで処置室まで運ばれた。処置室で点滴を打ちながら休む。すぐに検査をしましょう。医師が言った。CT室に運ばれ検査をした。すぐに、緊急手術になった。昼過ぎに病院に到着して、16時頃には手術室に入った。





 麻酔が切れて目を覚ました。病室に運ばれるベッドの上だった。当然、そのまま入院になった。この後、2週間程入院する事になる。手術を受けた夜。夜中に目を覚ました。身体を動かす気にはなれない。身体がほとんど動かない。動かす気にもならない。眠気はある。でも、意識はハッキリしていた。遠くから、何かが振動するような音が聞こえていた。なんとなく、耳を澄ましてみた。


 振動?もしかして、この音はお経。私が眠る病室から遠い場所、そんな所から御経が聞こえる。病室の前の廊下ではない。病室の窓の先からだ。この病室は4階だ。当然、そんな所から御経が聞こえるわけがない。まさか、まさか、まさか………。





 数日して、リハビリ担当の人から聞いた。手術で使う麻酔は、一時的に感覚を鋭敏にする事があるらしい。五感が鋭敏になる。酷い人は、幻覚を見る場合もあるらしい。私は、聴覚が鋭敏になったらしい。そのため、普通は聞き取れない窓の振動を聞いたようだ。それが、たまたま御経のように聞こえたのだろう。そうだ、麻酔のせいだ。





 そう言えば、この病院に通院し始めて、ホラー小説を書くようになった。それも、偶然だ。この病院とは関係なんかない。私は、今日も小説を書く。今も、またホラー小説を書いている。






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緊急入院と手術とお経<ショートショート> 坂道冬秋 @huyuakisakamiti

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