第9話 モフモフ自己紹介
異世界に来ていたと知って驚く私たち。羊お爺ちゃんは久しぶりのヒトの反応に懐かしさを覚えて嬉しそうに笑い、私たちをログハウスの中に案内した。
ギィッと音がする扉を開けると、ログハウスの中は吹き抜けの大きなリビングの二階建てで、リビングにはたんぽぽの綿みたいなものフワフワしたものが敷き詰めてあった。
なんだかわたあめのような甘い匂いもしていて、とても安らげる空間に思えた。
羊お爺ちゃんはリビングの中央にあるテーブルと
「どうぞ、お座りくださいな。なかなか良いデザインでしょう?」
幻獣の子供たちは不満気に「オレたちと遊ぼうよ」と言ったが、羊お爺ちゃんは子供達を宥めた。
「時間はたくさんあるよ。お嬢さんたちも突然のことでビックリしておるから、一旦休憩させてやりましょう。懐の深さこそ、幻獣の威厳に繋がる。これも大人になる訓練です」
その言葉に子供達は納得したらしく、私たちと一緒に椅子に座った。すると、私の膝の上に三匹の子供達が乗ってきた。モフモフとした毛並みが心地よく、甘いとっても良い匂いがする。リリアンにも四匹がくっついていて、リリアンは嬉しさのあまりグデっとしてニヤけている。
子供達が私たちに聞く。
「なぁ?名前はなんていうんだ?」
「私はフェルメール・アウター。フェルンでいいよ。あっちはリリアン。ねぇ、君たちのお名前も教えて」
私は笑顔で聞いた。幻獣の子供だっていうし、例えばエイシェントドラゴンとか、ケルベロスとかそんな感じなのかなと予想する私に意外な答えが返ってきた。
「オレッチは寅次郎」
私たちは思わず聞き返した。
「と、トラジロウ?」
「うん。寅次郎」
私とリリアンには電撃が走った。幻獣って大体個体名でしか知らなかったけれど、名前はそんな感じなの?!
私たちは子ども達の名前を順番に聞いてみた。
トラ柄の寅次郎。
桃色の八重子。
黒い角の生えた又三郎。
いちご色の静子。
枝豆みたいな
わたあめみたいに真っ白な三郎。(三郎被ってるじゃん!)
小さい羽の生えた天子。
な、なんて、古風な名前なのかしら……。
「げ、幻獣ってこんな名前だったのね……。召喚士に会ったことないから知らなかったわ。しかし、この名前は一体誰がつけたのかな……」
とリリアンが呟く。それぞれの子には親がいるのだろうか。それとも羊お爺ちゃんが親なのかな。
「あっ、そういえば、羊お爺ちゃんの名前聞いてないな……。おーい、羊お爺ちゃーーん。聞こえますかー?」
またリリアンが驚いて「ちょっと羊お爺ちゃんって、失礼でしょ?!あの人竜って言ってたじゃない!」と怒った。私は「へへっ、ごめん」と謝った。
羊お爺ちゃんは、ちょうどお茶を淹れ終わったみたいで、お盆にお茶を乗せてきて笑った。
「ホッホッホッ。そういえばまだ名乗っていませんでしたな」
羊お爺ちゃんはそう言いながら、私たちにお茶を出してくれた。色は淡いピンク色で、匂いはマンゴーのように熱帯の甘い匂いがする。
「どうぞ召し上がれ」
どんな味か気になった私は、ゴクっと羊お爺ちゃんが言い終わるより早く飲む。リリアンはこっそり私の足を踏みつけながら、羊お爺ちゃんに向けてお礼した。
「ありがとうございます。あ、とってもおいしい。私結構お茶には詳しいつもりでしたけど、飲んだことない味です。香りは甘い匂いですけど、微かにミントのような爽やかさもあり……」
私は「味を知りたい」という知識欲を満たして、思い出したように聞く。
「ところで、お爺ちゃん。お名前なんていうの?」
「ふぇ、ワシですか?私は……」
私とリリアンはごくりと唾を飲んだ。
「私はエリゾベート・マフ・ポートレーズ・エンバスト・ドラゴノートです」
全く覚えられなかったけど、どうやらやっぱり洋風な名前なことを知った。
魔力喪失した私達は異世界でモフモフを愛でます!〜二十代、研究女子と飛び級才女の異世界ライフ〜 チン・コロッテ@トーキョー @chinkoro
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