月の一族の御子である詩乃は、生まれた頃から日の一族に囚われ虐げられていた。
姉の死を知らされ、姉を死に追いやった相手と無理やり婚姻を結ばされることになり、世界からいなくなってしまいたいと思うほどに追い詰められた詩乃は、死を選んだ。
もう、ここまででも詩乃の人生の悲痛な叫びが聞こえてきそう。
決死の覚悟、それがどれだけのものかなんて想像もつかない。
海へと飛び込んだ詩乃の死の間際、そこで救いの手が差し伸べられた。
それが、タイトルにもある龍神様である。
お互いの利益のため、詩乃は龍神様――洵はへと契約結婚を持ちかける。
互いに自由に――好きな人と結ばれるために。
そのまま、逃避行に飛び出した二人。
逃避行と言いつつも、二人は自由で生き生きとして見えます。
その中で、二人は互いのためと言いつつも、少しづつ距離感や向き合い方が変わっていくような――それこそこの作品の楽しみと言えましょう。他にも、逃走劇には様々な問題が起こります。
どうか幸せな道を歩んでくれと願わずにはいられません。
おすすめです。
ツキを引き寄せる月の一族の御子である詩乃は、日の一族によって囚われ、虐げられていた。
日の一族の御子である宗一郎へ嫁いだ姉を殺された失意の中、今度は自分が次の花嫁になることに。
憎い宗一郎に嫁ぐくらいなら、日ノ本を安寧秩序へ導く役目を放棄してでも死のう。
そう心に決めて海へ身を投げた詩乃を助けたのは、龍神の洵。
彼も親が勝手に決めた婚姻から逃げている最中なのだと言う。
他人に好き勝手される運命から逃げることを決めた二人は、「洵が本当に結婚したいと思う相手を見つけるまで」という期限付きで、契約結婚をすることに――。
幼い頃から枷を嵌められ、虐げられて生きてきた詩乃ですが、その心根は強く気高いものでした。
暴力に屈さず、自分を保ち続けたからこそ引き寄せた洵との逃避行に、心が震えました。
洵は龍神というだけあって、不遜で、どこか考えがズレていて、それでいて恐ろしいほど無邪気な一面もある、魅力的なヒーローです。
最初は詩乃のツキを引き寄せる能力で親の追手からどこまでも逃げようという打算的な考えから彼女を助けますが、次第に詩乃という人間に関心が沸いていく様子が鮮やかに描かれています。
そして「誰のためでもなく自分のために生きる」と決めた詩乃が枷から解き放たれ、洵と一緒に外の世界へ踏み出す姿は、純粋に「がんばれ!」と背中を押したくなりました。
二人の逃避行がどこまでも続いてほしい気持ちと、もし終わりが訪れるのなら、無自覚な二人が本当の気持ちを自覚した時であってほしいと願わずにはいられません。
抑圧からの解放、そしてキュンを詰め込んだ契約婚。日本神話をモチーフにした和風ファンタジーの要素も魅力的です。
ぜひご一読あれ!
運命を変えるためのツキを呼ぶ力を持つ月の一族は、人並み外れた強さと頑丈さを持つ日の一族に支配されていた。
当代の「日の御子」である宗一郎に嫁いだ姉を、些細な理由で殺された詩乃は、後釜にと宗一郎に妻として娶られるのに逆らい、海へ身を投げる。
命を失うことを覚悟し、白無垢で飛び込む詩乃の決意に胸を痛めていると、龍神の洵が救いの手を差し伸べてくれた。
神様だからこそ、ただで助ける訳はない。洵は洵で、親が勝手に決めた婚姻から逃げているのだという。
ツキを呼べる詩乃の力を提供しつつ始まる逃避行。
ヒロインから契約婚を申し出るという斬新さは、現代女性の心に響くこと間違いなし。
自ら運命を変えるために踏み出す勇気に、励まされます。
頑張るヒロインだからこそ、時折出てくる洵の無自覚な独占欲に、キュンが大量に詰まっているっ。
二人の逃避行を、いつまでも眺めていたい。
素敵な作品です。オススメです!