第2話 ダクトストア

ソルト「ここが、”“…!」


そこには、直径100メートルほどの筒形で底が見えないほどの大きな穴?が足元に広がっていた。見えない底まで続いているであろう金属製のくすんだ階段が壁沿いにある。

上から見ると店の屋根が少し見えるだけだが、目視できるだけでも屋根の数はゆうに百を超えていた。


ソルト「こ、これがダクトストア…?」


シュラグ「そうだよ。もっと近くにいてみようか!」


ソルト「でも降りる道具…ないぞ?どうするんだ?」


今俺たちが立っているところから一番近い階段はここから10mほど離れているようだ。降りれば骨折の危険があるだろう。


シュラグ「ふふーん!そんなこともあろうかと!」


シュラグは青色のきれいな飴玉を出した。独特の匂いが鼻の奥を突っついたが不思議と不快感はなかった。


ソルト「なんだそれは?」


シュラグ「これはね〜!ここ、ダクトストアの僕オススメ品、“”さ!」


ソルト「ノーダメ…キャンディー?なんだその小学生がつけたような名前は…」


シュラグ「も~名前はこんなんだけど効果は絶大なんだから!」


シュラグ「その名の通り、どーんなに高いところから落ちても、刺されてもノーダメージなんだ!」


シュラグ「効果時間は舐め終わるまで。悪い点は外傷しか効果がないことかなー」

    「あっあと味かな?」


ソルト「味?まずいのか?」


シュラグ「好き嫌いが分かれる感じ〜パチパチするし」

    「僕は好きだけどね」


ソルト「ま、食べないと分からないし、降りられないからな。」


ソルト「そいじゃ」


シュラグ「うん!」


俺たちは同時に飴を口に投げ込んだ。


シュラグ「ん~相変わらずお~いし~~!どう?ソルトお味はいかが…」


ソルト「…」


シュラグ「だ、大丈夫?」


ソルト「これ…おいしいな!!」


シュラグ「あ、そう」


ソルト「最初はパチパチ超えてバチバチしてたんだが、それが消えていくとだんだん味が分かってきて、…とにかくおいしいんだ!!」


その飴はとても俺の口にあっているようだった。

面白い飴だ…こんなものがここダクトストアには売っているのか。


シュラグ「わぁ~よかった~」


ソルト「まぁ確かに、好き嫌い別れるかもな。若干ラムネっぽい、不思議な味だな」


シュラグ「そだね!じゃあ舐め終わる前に降りよっか!」


ソルト「ああ」


シュラグ「じゃあ!1,2の3!」


シュラグの合図で俺たちは下の階段に向かって飛び降りた。

妙に体がいつもより軽い気がした。

ほんの数秒で着地したが、シュラグが言った通り、無傷で痛みも感じなかった。


ソルト「おお!痛くもかゆくもない!」


シュラグ「よーし、じゃあさっそくお店を見に行こう!」


ソルト「上からは屋根しか見えなかったが…思ってたより階段の周りにたくさん店があったんだな。」


シュラグ「そだよ〜!まず、僕たちの後ろにある店に行こか。」


後ろを振り向くと長く、色とりどりの暖簾がかかった店があった。ほんのりと甘い匂いが漂ってきた。何か菓子などを売っているのか?


シュラグ「お邪魔します〜」


ソルト「失礼しま…」


⁇?「 いいらっしゃぁぁいませぇぇぇぇぇぇ!!!! 」


ソルト「うるさっ…」


シュラグ「おい!”“新客だぞ~?!」


???「わぁぁぁ…す、すみませんんん!!うちのテナーが…」


シュラグ「もー”“~注意してやってね~」


ソルト「?せ、説明をくれ……」


シュラグ「おっと!紹介するね!」

  

テナー「あたしは、テナーだ!!よろしくな、新客さん!!」


目につく赤のショートカットに白のジャンパー。

そして、黄緑の発色のいい瞳が印象的だ。


アルト「う、うちはアルト。優しくしてね、新客さん…」


テナーとは対照的に青のロングにお揃いの白のジャンパー。

血が繋がっているのか、同じ黄緑の瞳だった。


ソルト「ああ、俺はソルトだ。これからよろしく頼む。テナーさん、アルトさん。」


テナー「呼び捨てでいいぞ!ソルト!」


アルト「う、うん」


テナー「自己紹介も済んだことだし、あたしらの店“”を案内するぞ!!」


アルト「溜まってる仕事を片付けようと帰ろうとしているシュラグさんもね?」


シュラグ「何故分かったんだっ…」


ソルト「この店は何を売ってるんだ?」


テナー「ここは不思議で不思議な飴を売っている飴屋さ!」


シュラグ「ノーダメキャンディーとかねー!」


アルト「そうそう!ここの飴だよ。あれはうちの人気商品なんだ~♪」


ふふんっと自慢げに鼻を高めた。

彼女がここの飴を製造してるのだろうか。


テナー「じゃ、奥に飴ちゃんたーっくさんあるから着いてこーい!」


ソルト「明るい不審者……」


テナー「おい誰が不審者じゃ」


アルト「はいはい…、行くよ〜」


そう言うとアルトは奥に繋がる入り口と同じような暖簾をふぁさっと手であげた。


ソルト「!」


店の奥には、たくさんの飴が入った瓶や箱、棒に刺さった飴が無造作に置かれていた。

店を覆い尽くすような量の飴と、ノーダメキャンディーでも感じたあの独特な甘い匂いが俺の目と鼻にすうっと入った。

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地下闇市の仕掛け人達 戎屋 晴喜 @ebisushuya_haruki

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