地下闇市の仕掛け人達

戎屋 晴喜

第1話


「ここはとある地下のお店だよ」

そういったのはある男の子だった。


とはいっても声だけで判断しただけだが。なぜなら、彼(仮)はだれが見ても大きすぎて足もよく見えないような服に、これまた大きいフードをかぶっているのだ。あと、ここはどこなんだ彼(仮)は地下の店と言ってはいるものの正確さにかける。そもそも、俺はなぜここに来たんだ?、目的は?、どのような手順で?…だめだ…何一つわからん。


どうやら俺はここへ落ちてきたようだ。結構高いところからのようだが…なぜか無傷で痛みもない。まだ頭がぼやっとするが、考察するには十分だ。


彼「あ、自己紹介がまだだったね!僕の名前は”“っていうんだ!手軽にシュラとかラグって呼んでね。」


シュラグ「そしてこの僕がここ、さっ!」


俺(どうしよう…めっちゃ明るい奴だった…。こういうところにいる奴って普通暗いもんじゃないのか??ま、まあいいとりあえず名前は…分かったな。)


俺「…俺は““だ。」


シュラグ「ほうほう〜いい名前だね じゃあここの案内をしよっか!」





シュラグ「さーてさてさて、それではここ…ダクトストアの案内をしよう!」


ソルト「ああ…頼んだ。」


顔は見えないが、張り切っているようだ。奥の方を指さしながらハキハキと先を歩いた。


シュラグ「まず、ここはダクトストア第二棟だよ」


ソルト「二棟?何個もあるのか?」


シュラグ「うん!ダクトストアは中心に第一棟、その周りに円を描くように八つの棟があって、合計九棟の棟からなっているんだ。で、ここ第二棟は第一棟のすぐ北にあるんだよー。」


ソルト「そうなのか。ちなみにここは深さでいうとどれくらいなんだ?」


シュラグ「お、いい質問だね!僕たちが今立っているところは、深さでいうと地下10mのかなり浅いところだね。」


どうやらこの棟たちは、100m間隔で一層、二層みたいに分かれてるんだそうだ。

俺が落ちていたのは一層目にあるちょっとした床のような場所だった。


ソルト「ほうほう、棟については理解した。」

   「一番気になっているのだが、ここってダクト”ストア“なんだろ?」

   「何か店を運営しているのか?」


シュラグ「ふふん、よくぞ聞いてくれた!いつその質問が来るかワクワクしていたのだよ〜」 


シュラグ「あ、でも、言葉で説明するより見たほうが早いよ」




ソルト「…なあ。」


シュラグ「なんだい?」


ソルト「俺、ここまでどうやって来たのかとか分からないのだが、俺どんな状態だったんだ?」


シュラグ「んーなんかねー…僕、総店長の仕事として全棟の巡回の仕事があるんだけど、ここ回ってた時に「ドゴッ」って聞こえてきて、その場所に行ったら君が落ちていたんだ。」


シュラグ「いやー、びっくりしたよー…」


シュラグ「でも、久しぶりの新客だったし、僕総店長だから冷静に対処しなきゃなーって思ってたら、君がいたから鬱々な巡回の気分転換に案内してるのさ!」


ソルト「じゃあ、俺が落ちる?瞬間は見てないんだな。」


シュラグ「うん。」


ソルト「そうか…」


結局、俺の正体は俺自身でもわからなかった。

落ちた衝撃で記憶喪失になってしまったのだろう。記憶障害は自身にとって重要な事柄を体験したり見ると回復するというのをどこかで聞いたことがある。

何故自分の出生は分からないのに理論的なことがわかるのかは謎だが…。いつか、理解できる日が来るだろう。



シュラグ「さっ着いたよ!ここが、ダクトストアだよ!!」


ソルト「!」


細い道を抜け、下を見ると地獄の底まで繋がっていそうなほど深い大穴があった。下へ下へと通る風が、俺の頬をかすめた。


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