『P.K.O』~亡き友へ捧げるアルバム~

榊琉那@Cat on the Roof

亡くなる直前までのやりとりにも注目したい

 2025年7月16日に1枚のアルバムが発売された。『P.K.O』と題されたのは、頭脳警察のPANTAと、ムーンライダースの鈴木慶一さんのユニット名の事だ。

 これは、PANTA KEIICHI ORGANIZATIONの略称である。ユニットとしてはすでに1993年にライブを行っている。当然ながら、当時成立したPKO法案の事を意識しているだろうけれど、深い意味はないとは思う。その時はオリジナル曲はなく、鈴木さんがプロデュースしたPANTA&HALの曲を鈴木さんが歌ったり、逆にムーンライダーズの曲をPANTAが歌ったりしていた。何度かライブを見れたのは良い思い出だ。


 PANTAの晩年、余命1年だと言われて以降、悔いは残したくなかったのであろう、鈴木さんとのP.K.Oとしての作品を残そうとしていたのではないか。

 まずは2022年の年末に配信のみのシングルが発表された。そしてP.K.Oのアルバム制作は、頭脳警察のラストアルバムと同時進行で行われていた。体調がいい時にまとめてレコーディングしたり、無理をしない程度で数曲ライブに参加したりと、PANTAは亡くなる直前まで『ロック屋』として走り続けた。鈴木さんとは、危篤状態になるまでアルバムに関してやり取りが続けられている。鈴木さんは、PANTAの『ライブ葬』での別れの挨拶で、この辺りのエピソードを語っている。歌入れも終わっていないものもあったし、このアルバムはお蔵入りになるとばかり思っていた。


 しかしながら2年の歳月をかけて鈴木さんは、このアルバムを完成させた。殆どの曲が、PANTA作詞、鈴木慶一さん作曲の、二人の長い付き合いの集大成となったもの。頭脳警察ともムーンライダーズとも違う二人の世界。裏ジャケとブックレットには、PANTAが亡くなるまでのやり取りのメモが記されている。危篤状態の時は、マネージャーが代筆したりして。本当に亡くなる直前まで歌詞を煮詰めていたのがわかるでしょう。


 曲に関して、詳しい感想は書きません。自分が敬愛したアーチストの最後の記録だから。PANTAが最後に演奏したライブを収録した『東京三部作』、頭脳警察の最後のアルバム『東京オオカミ』、そして『ライブ葬』のDVD、それらと一緒に末永く聴いていくでしょう。願わくは、多くの人の記憶に残る事を。

(なお、『ミュージックマガジン』2025年8月号に特集記事が掲載されています)

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