第8話 再び、茎わかめを食す

大学へ戻ってからも、遥斗は事件について何も語らなかった。

新聞やテレビでも、大きな報道はなかった。ただ一行――「食品サークルでの事故」とだけ、静かに記されていた。


だが、大学の掲示板には、ひとつだけ新しいスレッドが立っていた。


 


 《幻の茎わかめ──

本物は、確かに存在する。

  だが、それを味わう覚悟はあるか》


 


投稿者:名無しのわかめ愛好家


本文は、ただ一言。


 


 「うまい。それだけでいい」


 


そのスレッドに返信はなかった。けれど、夜遅くまで閲覧数はじわじわと伸びていた。


誰が書いたかはわからない。だが、たぶん、あれは――。


 


本物を知ってしまった人間の、最後のひと噛みだった。

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茎わかめ殺人事件 泡依 ひかり @sana_nan

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