静かな町は、戦場と化す。②
夜——静かなこの町は、人口が少なすぎて毎晩闇と静寂に包まれている。
電気代を払えるほどお金を持っていない俺は、執筆の休憩にベランダへ出て涼みに行くのだが......。
毎年暑くなっていく夏。エアコンをつける金もないのにどうやって過ごそうか。こういう時にあいつがいたら......国民的アニメキャラがいた世界を想像する。やっぱ現実逃避するなら妄想だなぁ。考えながら遠くを見据える。
木の葉が揺れる。
風が吹いている。
耳の感覚が―—消える。
と思ったら突然、轟音が鳴り響き、静寂に包まれていたはずの町が豹変する。雷や、爆発とは違う音。金属がこすりあった、電車が急停止するときに出る不快な音.が鳴り続く。
当然耳は、いきなり鳴った巨大な音に耐えられるはずもなく、今でもダメージを食らい続けている。耳が回復し始めたころ、再び轟音が......。
「♪ららら、じょーそー!君と空飛ぶ!ららら、じょーそー!~」
「こ、これは、魔法少年じょーs、痛い、耳痛い!うるさい、やめてぇぇ!!」
知ってるぞこの曲!!これ、妹が家で歌ってるうっさい歌じゃねぇか!
聞こえてくるのはお隣の家。当然あいつが流している。家を追い出された理由ってまさかこれか!!うるさいからか!!そりゃぁ追い出されるわ!なんて心の中で突っ込んでいたら第二波到来。二番のサビだ。
あわてて、家の中へ転びこむ。窓とカーテンを閉めるが、改善された気配はない。
「おいこの部屋防音じゃねぇのか!?なんでまだ聞こえるのっ!!」
黄色い声を出しながら涙を流す。本当に耳痛い。
「あの野郎、絶対明日シバく。」
密かに決心し、こうして俺の執筆日が一日潰れた。
黄金執筆日(ゴールデン執筆デー)決壊連続記録:一日
ラノベ作家志望の俺が、近所に振り回されてます。(=ラノベが完成しないです。) 闇に舞う暗躍者 @yamiver2025
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