第10話:最後の夜

お見合いの翌日、アルフレッドは一度領地に戻り、後日返事を聞かせるということになった。ミレーヌには考える時間が与えられた。

その夜、彼女は再び薬草園にいた。今度は、旅支度をした小さな荷物を持って。

「本当にこれで良いのかしら」

月明かりの下で、ミレーヌは最後の決断を迫られていた。安全で名誉ある結婚生活を選ぶか、未知の世界での薬草師としての挑戦を選ぶか。

「お嬢様」

クララが現れた。彼女の手には、小さな革袋があった。

「これは私の貯金です。少しですが、お嬢様の新しい人生の足しにしてください」

「クララ...」

「お嬢様が選んだ道が、きっと正しい道です」

クララの言葉に、ミレーヌの心は決まった。

薬草園の一角で、彼女は最後に愛用の薬草書を手に取った。そして、静かに城を後にした。

月明かりが照らす街道で、ミレーヌ・ド・ローランは令嬢としての生活に別れを告げ、薬草師としての新しい人生へと歩み始めた。

彼女の心には不安もあったが、それ以上に希望が満ちていた。異国の薬草たちが、まるで彼女を呼んでいるかのように感じられた。

「私、きっと素晴らしい薬草師になってみせる」

小さな誓いを胸に、ミレーヌは朝日に向かって歩き続けた。

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令嬢ミレーヌの異国薬草店 ~自由気ままに紡ぐ癒しの冒険譚~ @ruka-yoiyami

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