映画「エクソシスト」の思い出

小山らみ

 

 子どもの頃、「エクソシスト」というアメリカ映画が日本でも大ヒットしました。

 少年マガジンの口絵に、場面を全部絵にした特集が組まれて、それを見て「わーこわそう」「どんなのだろう」「見たいね」と、クラスの子と騒いだり。

 

  実際に自分が見たのはテレビ放映でした。これがあの「エクソシスト」か! と、興味津々、楽しみましたが、こわい雰囲気が映画全体に漂っていたのはたしかですが、どちらかというと悪魔に取り憑かれた少女の顔がみにくくなって、口から緑色のどろどろしたものを吐き出したりするのがショックで、怖いというより気持ち悪いかんじだった。見たときは年齢のせいもあって、劇中の人間ドラマがよくわかってなかったな、というのがふりかえっての感想。


 さて、これは大人になってから、地方で洋画ファンの端くれとして、映画秘宝のムックを買って読んだりするのが楽しみで、その中で70年代の話題作を特集した号でしたかね(ざんねんながらもう手元にない)、そこで「エクソシスト」が取り上げられているのを読んで、ふーん、と思って。

 内容としては、

1)撮影中のフリードキン監督の傍目からは異常にしか見えない行動

2)出演者にとっては過酷だった撮影現場の実態

3)宣伝のえげつなさ

みたいなのが書かれていて、とくに、公開当時の宣伝については、撮影スタッフの一人が公開直前に亡くなったことを「悪魔のたたりか!?」みたいに宣伝に使っていた、と。

 この宣伝については、メリン神父を演じたマックス・フォン・シド―は「撮影が長期間に渡ると、途中でスタッフが亡くなることはあります」と、いたって理性的に答えており、悪魔に憑かれる少女を演じたリンダ・ブレアも「撮影はほんとうにたいへんだったけど、今の私は元気よ♪」と明るく答えていたそうです。

 そんななか、カラス神父を演じたジェイソン・ミラーは、ちょっとおもしろい話をしているんですね。

”カフェで台本を読んでいたら、一人の神父が私に近づいてきてこう言ったんだ。「あなたからひどく汚れたものが出ている。もし、あなたが悪魔のことを詮索しようとしているなら、そんなことをするのはお止めなさい。悪魔のことは放っておくのがいちばんです。関わらないように」そういう主旨の注意をされたんだよ”

 そして、何日か後、教会に行ったときなにげなく覗いた棺の中に、そのときの神父が横たわっていた、ジェイソン・ミラーはそう語っていました。

 ちょっと話としてはよくできすぎているし、額面通り受け取るものじゃないんだろうな、これこそ映画の話題作りの一環じゃないのかな、そんな風に思いました。


 2000年にはディレクターズ・カット版が公開され、それは劇場に観に行きました。デジタル化されていて、映像は鮮明、1974年に公開された時うわさになっていたカットされた場面も出てきました。でも、観た感想としては、あの70年代版の怖さは当時の映画のフィルムのざらざらした質感が一役買っていたんだ、それに、カットされた場面はカットされてたほうがよかった、当時の監督の判断は正しかったのでは、というもので、年齢のせいもあってか、淡々としたものに。

 そして。そのあとに、個人的には「え?」となる出来事がありました。

 ディレクターズ・カット版が日本公開された直後に、カラス神父を演じたジェイソン・ミラーの訃報が新聞に出ていたのです。 

 今回はそれが宣伝に使われたりすることはなく、私が一人で「え?え?!」と、こっそり盛り上がっているだけだったのですが、妙なめぐりあわせを感じました。


 


 関連して思い出しましたが。

 林由美香というAV出身の女優がいましたが、彼女は早死にしたのですよね。『「四谷怪談」でござる』でお岩を演じたのですが、その公開の3日後に亡くなりました。


 『HONKOWA』読んでいると、描いてるマンガ家もよくお祓いやお参りに行っているようで、そういうのはだいじなのかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

映画「エクソシスト」の思い出 小山らみ @rammie

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ