シスター・カノン




 朝日がステンドグラスから差し込むコリン教会。

 教会は、街外れの長閑な森にひっそりと佇んでいた。

 

 併設された孤児院では、お祈りが済むと朝食。

 硬いパンと、ほんのり塩味がついたーーちょっと甘い香りがするオニオンスープ。 それを皆、うまそうに食べるのが日課。


 片付けは俺たちの担当。

 自分で使った皿やコップは洗うように躾けられた。

 

「私は教会に参りますので、いつものように薬草をお願いね。

 ですが、薬草が見つからずとも、決して奥にはいかないこと!」


 そう言いながら治療院へ向かうシスター。

 教会とは、さして離れてはいない。


 https://kakuyomu.jp/users/kaede-san/news/822139842149809508

(*森を歩くシスターのイラスト)



 教会を訪れる呪いや麻痺状態の患者のために、

 シスターは聖水や薬を無償で施していた。



 シスターに頼まれ、毎朝のように俺たちは薬草採取に出かけた。


 この森は魔物や獣が出ないらしい。

 なんでも司祭様が周辺に”結界魔法”を張っていると聞いた。


 この日、なかなかいつもの薬草が見つからず、

 俺たちは知らぬ間に陽も差さない暗い森の中まできていた。



「おい、帰ろうぜ、ゴクトー!」

「そうだよ、ゴクトーにぃ危ないよ」


 俺は銀髪を小枝に擦らせながら、藪を抜ける。

 茶髪を靡かせケントが恐る恐るの声を漏らす。

 連れの妹ミクも、俺の腕を掴みながら止めた。


「でも、見つからないとシスターが悲しい顔をするから」



 俺はそう言って藪を踏み鳴らした。



 司祭様の結界がきっと守ってくれる。


 思いながらずんずん進んだ。


 どこか緊張感が漂い始めたーーその瞬間。


 

 ガサ…ガサ…



 奥の方で木々が揺れた。


 「何か!いる!」


 ミクが声を張った。


「ぎゃぎゃー!」


https://kakuyomu.jp/users/kaede-san/news/822139842149982042

 (*ゴブリンに襲われるゴクトーたち)

 

 俺たちはゴブリンの群れに囲まれていたーー。







──────────


 *【作中補足と登場人物】*


 

 【シスター・カノン】26歳

  

 倒れていたゴクトー(当時10歳)をこの孤児院に連れてきた。

 コリン聖教会所属の乙女。

 だが彼女は……。



 【ケント・デリカモット】

 両親に捨てられゴクトーと一緒に孤児院で育った双子の兄。


 【ミク・デリカモット】

 ケントの双子の妹。





【 魔物名】ゴブリン(Goblin)

 • 分類:亜人系

 • 生息 森、ダンジョン。

 • 危険度:★★☆☆☆

 • 特徴:小柄で俊敏。集団で襲う習性があり、火に弱い。

 • 備考:知能が高い個体は“ゴブリンソルジャー”や“ジェネラル”へ進化する。


 





 



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付録『妄想図鑑』 が世界を変える? 【異世界トランザニヤ物語】 #イセトラ R15 楓 隆寿 @kaede-san

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