最終話 俺達の――今!


  海王第一学園中等部  対  佐倉西中学校


    九回表   1   -    3




 球場中から沸き上がる声援の嵐と熱を帯びた吹奏楽の応援の音――絶対王者たる海王中に挑む俺達の白熱した試合は、正念場を迎えていた。


 九回表――二死二塁三塁、迎えたバッターは怪物、水無月海。長打を許せば逆転負け、逆に抑え込めば俺達の勝ちが決まる。


 チラリ――と敵軍のベンチに視線を向けると、全員が総立ちでバッターボックスに立つ海に声を送っている。その中心には、空と海の父ちゃん――水無月監督が真っ赤な顔で仁王立ち。だはは~相当焦ってるな、あれ!


 ピッチャーマウンドに視線を戻す。空が、大きく肩で息をしながらもニッコリと微笑んでくれた。楽しみ過ぎて惜しいけれど、もう、終わりにしようぜ――空。


 今、カウントはツーストライク・ツーボール。この一球で全てを決める。俺は、迷わずサインを送った。


 ココまで、海と俺達の対戦は四回あった。そんで俺達の勝率は三勝一敗。つまり、二回表のホームラン以降は海を抑え込んでいた。何故、そんな事が出来たのかって?その理由は、俺達に秘密兵器があるからだ。


 俺と空の秘密特訓の成果――ナックルボール。


 ナックルボールは無回転ボールとも呼ばれ、バッターの直前で球が不規則に変化する予測不可能な球。まさに魔球ってやつだ。


 だが、この球にも弱点はある。この球は、とんでもなく握力を使うんだ。女の子の空が一日で投げられるナックルボールはせいぜい4~5球。だから俺達は、ここぞという場面でこの魔球を使ってきた。だから、怪物を黙らせることが出来ているんだ。


 だが、全く油断は出来ない。間近で感じる海のスイングは、怪物の名に恥じない迫力で俺達を噛み殺そうと牙を研ぎ澄ませ続けている。


 空が、セットポジションに入りニコリと笑う。蒼太先輩――この球に、私の全部を込めるから、しっかり受け止めて下さい……ってか。



 ――――ああ分かったぜ、空!


 受け止めるから、お前の全部でぶつかってこいっ!!!



 空の全身が躍動し、振り抜いた右腕から放たれた白球が俺の構えたミットに向かって一直線に進んで来る。そう、俺達が最後の一球に選んだのは全身全霊を込めた渾身のストレート!何故ってもう、秘密兵器は球切れだしっ!


 ブオォォオウ!!スパパァ―――ッン!!!



 それを迎え撃つバットがくうを切り、俺が受け止めた瞬間―――勝利の女神が最高の笑顔で俺達に微笑んだ。

 

 割れんばかりの歓声の中、俺は両手を広げて空の元へと駆け出した。



「蒼太先輩ッ!大好き――――――っ!」




 俺達の今――積み重ねていこうぜっ!空――っ!







           了








読んでくれて、ありがとう!私の渾身の一球、届きましたか?(笑)

大切な今を生きる貴方が、大好き―――っ!


                    虹うた🌈(^_-)-☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

⚾️あおぞらのリベンジ!⚾️【短編小説】❧ありす甲子園2025参加作品❧ 虹うた🌈  @hosino-sk567

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ