みんな なかよく

@namakesaru

みんな なかよく

 あるとき、地球に大型の宇宙船がたどり着いた。


 各国の首脳たちは、その宇宙船を受け入れるべきかどうかで揉めていたが、無人島への着陸を要請しその通りに行動するのであれば、攻撃を見送るという話で一致した。


 宇宙船は、指示されたとおりに無人島へ着陸した。

 宇宙船の中から、たくさんの種類の生物が出てきた。まるで、ノアの箱舟のようだった。


 生物たちの姿は、地球の生物とよく似ていた。人間と同じ姿をした生物もいる。

 その人間もどきは、地球人と同じように社会的な生活を送っているように見えた。


 こちらを攻撃するそぶりは全く認められず、各国の首脳は、その無人島へ人間を送り込むことにした。

 それぞれの国の言語学者に生物学者、物理学者がAIとともに島へ上陸し、コミュニケーションを取ることを試みた。


 宇宙人は助けてくれたことに謝意を表し、穏やかな交流が開始された。


 はじめて相互理解ができた言葉は、

「みんな なかよく」

 だった。


 そうして、宇宙からの生物が地球に及ぼす影響がわかるまでは、彼らの生活の場はその無人島に限定するという約束が結ばれた。植物の栽培も、建物の中に制限した。



 それから数年がたった。

 彼らの中には、無断で島を抜け出す者も出てきた。

 植物は建物の外で栽培されるようになっていた。

 鳥のような生物は、既に島を飛び立った。海に放たれた水生生物もいた。


 純粋な地球の生物に与える影響は、まだよくわかっていない。

 交配するようなことがあれば、地球の生物が滅亡する可能性もある。


 首脳たちは宇宙人へ訴えた。

 はじめの約束を守ってほしい。

 しかし、馬耳東風、糠に釘、暖簾に腕押し。


 約束を守れないなら、地球から出て行って欲しい。

 返答はシンプルだった。

「私たちには帰る場所がない。ここがもう、私たちの新しい故郷だ」


 首脳たちは本格的に、宇宙生物を排除することを検討し始めた。


 彼らの持つ技術は既に研究している。

 宇宙を異動する技術はとても優れているが、いわゆる武器というものは地球にあるものとあまり変わらないように思えた。

 宇宙船の設備なのだから、攻撃力はそこまで大きくはないだろう。


 とうとう排除を決定し、島を訪れ、最終通告を行った。


「この地球は私たちのものだ。あなたたちが仲良くできるというから、この地球での生存を許してきただけだ。いまのあなたたちの行動は、私たちの善意を逆手に取ったものだ。もう、なかよくすることは難しい。私たちは、あなたたちを排除する方向で一致した」


「なかよくしてあげたのに、その態度はどういうことだ?」

 宇宙人たちが憤る。


「みんな、なかよく。その姿勢を素晴らしいと思ったから、この島で生活することを受け入れたのにいつまでも閉じ込めたままだ。地球人がこの島に勝手に来て生活を撮影していく。それを見逃していたけれど、こちらが外へ出るのはダメだという。なかのよい相手にとる態度か?」


「私たち地球人は、あなたたちを受け入れ住むところを与えた。それを続けるために、ルールを守ってほしいとさんざん忠告してきた。ちゃんとなかよくしてきたじゃないか」


「なかよくしてやったのはこちらだ」


 宇宙人たちは、島を訪れていた各国首脳を殺してしまった。


 そして無人島を後にし、世界各国へ散らばって行った。

 彼ら個々の戦闘能力は高く、あっという間に地球人は減少した。



 残された地球人は言う。

「せっかくなかよくしてやったのに」


 地球をわがものとした宇宙人は言う。

「こんなことなら、最初からなかよくする必要は無かったな」





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