弾丸で蘇るアイム総理

 私はその日から、様々な“仕事“をしていった。

 税率を上げ日元国の国民たちを貧しくさせ、考える気力を奪うこと。

 また、“セルフナンバーカード“を促進させた。

 表向きは適正な管理だが、実際は“華震国“にデータを流す為だ。

 この前500万人の流出が明らかになったが、ここからまだまだ行わないといけない。


 もちろん、華震国の国民を優遇する措置も忘れず促進している。

 ドンドン補助金を出し、彼らを日本に招き入れる為に。

 まずは当面の目標は、5000万人の華震国民たちを国内に入れることだ。

 当然、日元国の国民には優遇措置なんて出さない。

 また、華震国が日元国の土地を買いあさっているが、それも私の指示というか許可だ。


───私は、日元国の国民たちを、滅ぼさないといけないのだから……


 もう、私の心はとっくに死んでいる。

 いや違う。

 殺したのだ。私自身で自分の心を。

 そうしなければやっていけないから。


 そんな私の下に、あの冷酷な眼差しを持つ青年は時折やってくる。


「川波社員、なかなかのいい働きです。ジョ・ジーヴあのお方も褒めておられましたよ」

「……そう、ですか。なによりです……」


 椅子に座ったまま力なく抜け殻のように答えた私を、彼は隣から見下ろし静かに告げてきた。


「Xデーへの準備もさらに進めて下さい。失敗は、決して許されません」

「はい……」


 “Xデー“。

 それは華震国がこの日元国を完全に武装制圧する日のことだ。

 今、各地に身を潜めている、または民間人に偽装している華震国の人間達が一斉に立ち上がり、一気にこの国を乗っとる計画に他ならない。


「国防隊にも、裏から手は回してあります……また、他の議員たちの資産や弱みも、ちゃんとアナタたちに提供していきます……これからも……」


 私がゆっくりそう告げると、彼は満足そうに軽くため息をついた。


「分かっていると思いますが、“その日“が来ても、アナタたちは問題ありません。それを持っている限り」


 レッドカードを持っているのは、私を含め華震国に忠誠を誓ったごく一部の人間たちだ。

 これを持っている限り私たちは助かる。

 他の日元国民たちが殺されたり、奴隷にされたりしても。

 以前の私なら烈火のごとく怒っただろう。

 しかし、心が死んだ今となっては、もう、何も感じない。


「赤い光の、導きとともに、これからも、全力を、注ぎます……」


 私が抜け殻のように零すと、彼は平静な顔をしたまま、横から私の肩にポンッと片手を乗せた。


「……期待してますよ、川波社員。日元国の最後の総理としてね」


 彼はそう言ってニッと口角を上げると、スッと背を向け総理室から立ち去ってゆく。

 その背に、私は一瞬何か何か別の恐ろしさを感じたが声は出ない。


◇◆◇


 バタンとドアを閉め総理室から出た後、彼は廊下を歩きながら思っていた。


───フンッ、バカめ……助かるわけがないだろ。制圧と同時に真っ先に葬られるのは、秘密を握るオマエたちだ。クククッ……ハハハッ……アーッハッハッハッハッ!


◇◆◇


 そんな彼の邪悪な心も知らず、私はそれからも”仕事”に勤しんだ。

 かつてジョ・ジーヴが告げてきた”アイム・ソーリー”という言葉すら、もう私の心には無い。

 心が死んでいるから。

 しかし、時に、ふと一瞬脳裏によぎる。

 私が総理になる前に起こった、ある出来事が。


 それは、私を救ってくれた少女の記憶。

 今の私の状態では、モヤがかかっていて顔もハッキリとは思い出せない。

 何より、それを思い出すのを、心が拒否している気がする。

 その記憶こそ、私のたった一つの宝だから。


───けど、もういいんだ。私は、もう……


 今日も今から、国会という名の擬似的なものに参加しなければいけない。

 国会など、ただのパフォーマンスの場。

 実際は全て裏で決まっているというのに。


───ああ、なんて私は無力なんだ……


 だからこそ思う。

 いっそ、誰か私を”撃ち殺して”くれないかと。


 このまま日元国を破滅に導くぐらいなら、誰かの弾丸に倒された方がマシだと思ってしまう。

 反逆せず私だけ殺されるなら、家族は助かるだろう。

 しかし、私は力なく首を横に振った。


───そんなヤツ、いるわけがない……この国にはもう……


 絶望で体が鉛のように重い。

 その体を椅子からなんとか起こすと、国会へ向かう。

 これまでと、何ら変わらないという気持ちを抱えたまま。


 しかし、この日は違った。


 なんと、国会の最中にとある一人の青年が銃を持ち転がり込んできたのだ。

 彼は必死の形相で私に両手で構えた銃を向け、議事堂を震わすような叫びを上げた。


「……川波いいいいいいいい─────っ!!!」


 その場の全員が驚愕に目を見開く中、彼は私に銃を突きつけたまま告げてくる。

 私たちの密約と、その結果この国が、そして、あの少女がどういう運命を辿るのかを。


 それを知った私の心が、死んでいた私の心が蘇る。

 無論、このとてつもない大騒動に、あの青年はもちろん、ジョ・ジーヴも現れた。

 けれど、もう関係ない。

 この国の皆を守る為に命を賭して現れた『大和(ヤマト)』という青年の想いを受け取ったからだ。


───アイムソーリーだと……? ふざけるな。私は、”アイム総理”だ!!





───────────────────────


この続きは、前作、

『弾丸の向こう側 ──俺は撃つ!国を売った総理と、灰色の未来を!』

https://kakuyomu.jp/works/16818622177064622061


で、ご覧になってみてください。

また、元々前作をご覧になって下さっていた方は、こちらも読んで下さってありがとうございました。


もちろん、今回の話も創作です。

ただ、マイナンバーカードの流出があったのは事実ですし、土地を買われたり、あり得ない補助金を出したりしているのは事実。


今回は、『なぜ、石破総理がこんなに国民を苦しめる政策や売国政策を行っているのか?』

そこに焦点を当て、もしこうなら……と、いう考えで書いてみました。

だからこそ、彼からの視点で。


また、自分は普段、こんなバイオレンスな話は書きません。

『転生のステージライト』

https://kakuyomu.jp/works/16818093091989983340

のように、真っ直ぐ夢を追う話や、


『今”終末”は滅亡デートだってばよ!』

https://kakuyomu.jp/works/16818792435774016458

みたいなラブコメや、


『ラブライス! お米女神(おこめがみ)たちと”炊き直し”の大冒険』

https://kakuyomu.jp/works/16818622176085841088

みたいな楽しくコミカルな話を書いてます。


ただ、このままだと、そんな世界じゃなくなってしまう。

せめてまだ選挙が”意味のあるうち”に行って、日本を日本のままでいさせたい。

その為に、少しでも政治に(せめてこういう非常事態の時だけでも)興味を持ってほしいと思って書きました。


それぞれ考えはあると思いますが、少しでも想いが届いたら嬉しいです。

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アイム、総理〜(^人^) ジュン・ガリアーノ @jun1002351

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