おふくろの味
A-DASH
おふくろ
「ただいま。」
『おかえり〜晩御飯冷蔵庫入ってるから!』
「おう、サンキュー」
『あと弁当の箱出しといてね!』
「ほいこれ、ちょっと着替えてくるね」
『(どれどれ…まただわ。ここ最近いっつも弁当残してる。晩御飯も全部食べてくれないし、どうしたものかしらね…)』
「そういや今日の示談すごく上手くいってさ、3社も契約結べたんだよ。部下もすごい俺のこと褒めてくれちゃってさ…そんなすごい事じゃないっての!ハハハ!」
『やっぱり流石ね!私の旦那として相応しいわ!』
「だろ。これからもお前のためにいっぱい稼いでくるからな!」
『カラカラ…ゴクッ…』
「最近ずっと頭痛薬飲んでるけど大丈夫か?」
『大丈夫よ。昔から頭痛しやすい体質だからね…心配してくれてありがとう』
「体には気をつけろよ。俺にも移るかもしれないからな。」
『うん気をつけるね!そういえば私もこの間いいことあって』
「ごちそうさま。」
『あ!ちょっともう!』
「え?なんかあったか?」
『ちょっとあなた、なんで最近私のご飯残すのよ』
「お腹いっぱいなんだよ。」
『ちょっと!私いっつも晩御飯作ってるじゃない!なんで外で食べてくるのよ!』
「ごめんごめん」
『ちゃんと理由を教えて!』
「ずっと我慢してたこと言うよ。」
『何よ。』
「お前、俺が結婚する時に唯一求めること言ったの覚えてるか?」
『えーと、なんだっけ!』
「おふくろと同じように家事をこなせって、言ったんだ」
『あー!そんな事言ってたわね。でも私だって!』
「俺も我慢してたんだよ!例えばこの味噌汁!何味噌を使った!」
『え?適当に安かったやつだけど?』
「八丁味噌使えって言っただろ!」
『八丁味噌なんて売ってないもの!』
「じゃあ色んなスーパー回って買ってこい!そこまでするのが妻の仕事だろ!」
『はぁ!?じゃああんたが会社の帰りに選んで買いなさいよ!』
「仕事で疲れてんのにそんなことしてる暇ねーっての!」
『大体最近文句が多いわよあなた!洗剤違うとか!お風呂のお湯がぬるいとか!』
「どれもこれもお前が約束を守んないからだろ!」
『あなたが使えって言う洗剤の匂い好きじゃないのよ!お風呂だってあなたが水虫だから先に入れないから!』
「文句が多いのはお前の方だな」
『大体亭主関白なんて古い考え押し付けないで!あんたはそんな器じゃないでしょ!』
「なんだとこの野郎!!」
バチンッ!!
『痛い!あなたなんて大嫌い!』
「勝手言ってろ馬鹿が…」
寝室にて
『カラカラ…ゴクッゴク…
何よもう…おふくろおふくろって、我慢ってものを知らないのかしら…
大体頭痛薬が増えてるのも何もかもお前のせいだっての!何が体に気をつけろよボケカス。
あぁもうダメ。あの野郎に一回仕返しがしたい気分だわ…あ、いい事を思いついちゃった。』
⸻
翌日
「〇〇さんおはよう!」
『あ、藤崎さんおはようございます。』
「昨日は旦那さんの怒号が聞こえたけど大丈夫?」
『はは、全然大丈夫ですよ…』
「顔もげっそりしてるし、休んだ方がいいわよ…」
『や、やっぱりそうですかね…』
「私が言うのもなんだけど…別れた方がいいんじゃない?」
『いや、いいんです。私には今、楽しみがありますから…』
「あら、そうなの?ストレスを発散できるものがあることはいいことだと思う!応援してる!」
『ありがとうございます…へへ…』
「(〇〇さん、目がまったく笑ってない、結婚した時はあんなにキラキラしてたのに。なんか危ないこと考えてないといいけど…心配になるわ…)」
『フフフ…』
プルルルル…
「はいもしもし?」
『すいませんタケルの妻の○○です。』
「あぁ〇〇ちゃん。うちのタケルがお世話になってます。」
『あの、旦那の事で相談がありまして…』
(昨日のことを全て話した)
「あら、そんな事が!?」
『いえいえ、お義母さんは謝らなくていいんです。私は言い過ぎたところもありましたし、謝るべきは私です。』
「あの子を私に依存するように育てた私にも責任があるわ。本当にごめんなさい。」
『そして私、考えたんです。お義母さんの事、勉強してがんばります。』
「そんな事されて離婚してもおかしくないのに、〇〇ちゃんは優しいねぇ…」
『私はこれでもタケルさんの事が好きなんです…!旦那が明日から出張なので明日から是非ともそちらに向かわせてください!』
「〇〇ちゃんの心意気伝わったよ。〇〇ちゃんが知りたいならたくさん教えてあげるよ!」
『ありがとうございます! タケルさんに相応しい妻になれるよう頑張ります!』
「タケルは昔からすぐ暴力に走るけど、根は優しい子なの。きっとあなたのその寄り添う気持ちがあればタケルもこころを開いてくれると思うわ。」
⸻
数週間後
「ただいま」
『おかえり! 今日の晩御飯は自信があるの!』
「あぁ?なんか変えたのか?」
『私、頑張ったんだから!』
「どれどれ、ん! 美味いじゃん!」
『でしょでしょ!』
「この味噌は八丁味噌、そしてよく分からないがこの具も美味いじゃないか!
このハンバーグもどこか懐かしい味がする!」
『私ね、あなたが出張に言ってる間お義母さんのところで特訓したのよ!』
「お前…」
タケルが私に抱きついて来た
『え?何!?』
「正直あの時、離婚しようかと考えたよ。でも今の君を見てそんな気持ちは全て吹き飛んだ!」
『私もよ…』
「今までも、これからも俺の妻でいてくれ。大好きだ。」
『あなたがこんな笑ってるの久しぶり…』
それからというものタケルのお母さんのおかげで夫婦の中はどんどん良くなっていった。
「〇〇さん!おはよう!」
『藤崎さんおはようございます!!』
「ここ最近元気ね!旦那さんともうまくいってるそうじゃない!」
『はい!最近は本当に楽しい毎日で!』
「それは素晴らしい事ね!何かきっかけでもあったの?」
『全部…あの人のお義母さんのおかげです…』
「確かにタケルさんお母さんの話よくしてるものね!やっぱり母の力は偉大だね!」
『本当ですよ。フフ…』
「(一時期はどうなるかと思ったけど、元気を取り戻したみたいね…本当に安心した、ずっとこの調子で続いてくれればいいけど。)」
そんなとある日
「今日もお前のご飯はうまいな!」
『ウフフ…ありがとう。でもそろそろ美味しいご飯も作れないかも…』
「そういやここしばらくお母さんと電話しても繋がらないんだけど何か知ってるか?」
『最後に私が会った時は元気だったけど、どうしたのかしらね?』
「…そうか。そういえばこのシャツ、最近赤くなってないか?」
『確かにそうかもね。』
「まさか!なんか絵の具やらなんやら入れてないよな!なんちゃって」
『もしかしたら柔軟剤の色かもしれないわね。そういえば柔軟剤もそろそろ切れそうだったわ。新しく取りに行かないと。』
「赤くなる柔軟剤なんて使わない方がいいんじゃないか?」
『これもあなたのためよ』
「え?そんな事言ったかな?」
『その赤色はあなたのお母さん。』
『…どう言う事だ?」
『お義母さんの血。』
「…は?」
『今日のモツ煮だってお義母さんのもの』
「え…!?」
『その器だってお義母さんの形』
「頭蓋骨の形…!?嘘だ!!」
『嘘なんかじゃないわよ。お義母さんの皮はしっかり炒めて昨日おつまみにして出したし、指の骨は箸にして、脂肪はしっかり溶かして保存してるわ。そしてあなたのお母さんの鐙骨のイヤリング、私気に入ってるのよ。』
「ウッ!オエエ…!!ビチャビチャ…」
『ちょっとあなた!吐いたらお母さんに失礼でしょ!ほらアーン…』
「やめろ…やめろ…!」
『あなたはお母さんを求めた。そこで私は考えたの。あなたとお義母さん、心理一体になればいいって』
「お前、何を言ってやがる!」
『本当は全部食べてもらってから教えるつもりだったんだけど、めんどくさくなっちゃった。』
「意味が分かんねえよ!」
『でもこうやって、苦しみながらお母さんを飲み込むあなたの姿も、たまらないわ。』
(モツ煮の入ったスプーンを口に突っ込む)
「オエッ!ヤメロ"ッ!!グゴッ!!」
『しっかり食べるんでちゅよ〜』
「ゴゲッ!!グホッ!!オゲゲッ!!」
『吐き出してばっかで悪い子!!』
ゴン!!
「痛ッ!!」
『自分で望んだ事を拒む悪い子はこの大腿骨バッドで殴るわ。』
ゴン!! ゴン!!
「ヴッ…ヴゴッ…ガッ!!」
『そろそろ食べる気になったかしら…はいアーン…』
「オエッ…やめてくれ…」
『黙れこのマザコン!!』
ゴン!!バキバキ!!
「クッ…ゴホッ…オエエェ…」
『もう気を失わせてから飲み込ませた方が早いわね。少し眠ってちょうだい』
ゴン!ゴン!!ゴン!!!ゴン!!!!!
「コッ……」
『あら、うっかり殺しちゃったわね…まぁいいわ。あなたの事もしっかり使ってあげる…』
⸻
翌日
昨晩N県D市で殺人事件が起きました。
犯人はこの家に住む自称無職の田中〇〇容疑者です。
〇〇容疑者は昨日午後8時頃旦那の田中タケルさんを鈍器で撲殺したものと見られます。
自宅からは様々な形に加工されたタケルさんの骨と見られるものと、身元不明の骨だけの遺体が発見されており検察の鑑定により死後1ヶ月ほど経ってるものと見られます。
身元不明の遺体に関して警察は先月26日から行方不明になっているタケルさんの母、美沙子さんとの関連性を調べています。
事件に対し〇〇容疑者は容疑を否認しており
「私は旦那の望む通りにした」と供述しております。
おふくろの味 A-DASH @whatever025
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