あとがき

あとがき

『誤読 - three stories of love and truth』を最後まで読んでくださりありがとうございます。


この小説集には、誤読というテーマで三つの異なるジャンルの物語を収めました。


最初の物語では、「言葉」が虚構を生み、現実を捻じ曲げました。

次の物語では、「想い」がすれ違い、真実を曇らせました。

そして最後の物語では、「誠意」が、時に独りよがりとなって、さらなるすれ違いを生みました。


いずれも、人が「正しい」と信じて選んだことが、

実は“ほんとう”とは違っていた──そんな瞬間が描かれています。


第3篇『葛城くん! わたしに正しい走り方を教えてください!』は、ジャンルとしては青春ライトノベルに属し、

他の二作に比べても、少し軽やかで異質な印象を持たれたかもしれません。


ですが、この物語にも、小さな「誤読」が仕込まれています。


それは、「努力家の少女が、知識ある少年に救いを求める物語」ではない、ということ。


彼女は無意識のうちに、彼を“信じるため”ではなく、

“責任を預けるため”に選んでいました。

そして彼もまた、頼られることの意味を、最初は深く理解していなかった。


この物語は、すれ違いと誤読から始まる、小さな再出発の記録です。

それを、ふたりが自分たちの言葉で、ゆっくりと解き直していく──

そんな時間を描いてみました。


人間の感情というのは、ミステリのトリック以上に曖昧で、複雑で、

そしてときに、本人すら気づかないかたちで「誤読され」「誤読して」しまうものです。


私たちは日々、誰かを見つめ、何かを読み取り、判断しています。

けれどその読みは、本当に正しかったのでしょうか。

その人の心は、ほんとうにそうだったのでしょうか。

あるいは──

自分自身の気持ちすら、読み違えていたのではないでしょうか。


誤読は、物語の中だけで起きるものではありません。


それは、日常のすぐ隣にある出来事であり、

ときに優しさをもって人を救い、

ときに残酷さをもって誰かを遠ざけてしまう。


この三篇は、異なるジャンルと語り口を通して、

「読む」という行為の危うさと、信じることの難しさを描こうとした連作です。


──あなたは、登場人物たちの言葉や行動を、正しく読み解けたでしょうか。

そして何より、

あなた自身の心を、正しく読み解けていたでしょうか。


読んでくださって、ありがとうございました。

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誤読 - three stories of love and truth ミノルマサカ @mgurin26

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