アルコール依存症を診ている病院に入院したい

Unknown

【本編】

 2025年6月28日。今日は作業所が土曜開所の日だった。なので午前中、在宅ワークをした。もちろんシラフで仕事した。酔ってると作業なんて出来ない。


 今、俺の精神状態が良くない。どのような感じかというと、自分がこの世に存在していないような感覚だ。極力アパートのベッドで目を閉じて横になって過ごしている。生活に必要なものなどは、しばらくは親が持ってきてくれることになった。しばらくアパートに籠っていれば、俺がフラッと失踪したり死亡することはまず無いから。


 今は、「自分の心がよく分からない」という気持ちや、未来への漠然とした不安がかなり強い。


「俺は生きる資格があるのだろうか?」とベッドで目を閉じて自問していた。


 俺が生きる資格は「一応少しある」かもしれない。でも「ないよ」と誰かに言われても腑に落ちる。抜けかけの歯みたいに、自分の存在意義やアイデンティティがグラグラしているのを感じる。


「吾妻ひでお」という漫画家の、「失踪日記」・「アル中病棟」という漫画を昨日は読んでいた。どちらも名著だった。


 俺はそれらを読みながら、今、自分が限りなく死んでいるような気持ちになっていた。


 俺は「自分の全てである酒」を辞める決断をした。死んで生まれ変わったような感覚がした。でも事実として断酒は80日も続かなかった。家族も失望させた。俺は自分に深く失望した。そしたら、やがて俺は「自分の今の精神状態がよく分からない」という精神状態に陥った。空っぽで静かな感覚だ。心の中に自分が居ないような感覚が今もある。この今の俺の状態は、危険なのではないかと思う。外に出てしまうと、フラッと失踪するか、間違って死を選択するんじゃないかという怖さもある。だからアパートにしばらく引きこもる事を選んだ。今後の経過によっては4度目の精神科への入院が必要になると思う。ちなみに月曜、水曜、金曜の3日間が主治医がいる日だ。


 だが俺は、精神科ではなく、アルコール依存を専門に診ている病院に入院して治療を受けたい気持ちが強くなっている。


 あと、お酒に関して、今まで全く作ったことの無い決め事を母と昨日会って相談して決めた。母からの提案を全て吞んだ形だ。普段、俺は平日は15時半まで在宅ワークの作業所で仕事をしている。俺が酒を飲むのはそれ以降の時間、という決まりを作った。あと、具体的な本数は1日に4本まで。あと、絶対にネットで酒を箱買いしない事も約束した。


 俺は、この決まりを守ることが出来なかった場合、自らの意志でアルコール依存症を専門に診ている病院に入院する事を決めている。親にはまだ伝えていないが、今日、その意志は伝える。そして入院治療やAAや断酒会に積極的に参加する。実はそういった“依存症を専門に診ている病院”は、本人が「治療を受けたい」という意志をしっかり見せなければ、入院させてもらえない。(病院によって違いがあるのかもしれないが、少なくとも俺はそうだった。かつて、俺は入院を勧められて拒んだという過去がある。でも今の自分は積極的に入院治療をしたい気持ちだ)


 やっぱり自力だけで一生涯アルコールをやめ続けるのは俺の場合、絶対に無理だと感じた。今、俺は専門の機関での治療・またAAや断酒会と自己を繋げたい気持ちが強い。


 だけど、仮に入院を終えて、AAや断酒会との繋がりを継続したとしても、俺が永遠にアルコールをやめられるのか不安でしかない。冬の曇り空のように、何もかもがぼんやりしている。かもしれない。


 依存症は脳の病気で、本人の意志の強さ・弱さの問題ではないと言われている。既に脳が変形してしまっている。アルコール依存症を治す唯一の治療法は、死ぬ瞬間まで一滴も飲酒をしない事だけだと言われている。


 そして断酒の継続率は低い。どれだけ辞めたいと強く願っても、俺は酒を飲んでしまった。80日も持たなかった。


 酒を飲んでしまった俺は、後になってから自分を強く責めてしまった。(俺には生きる資格が無い)とまで思った。今は、心の中に自分が存在しないというような気分になっている。


 俺は自分の事がよく分からなくなってしまった。


 ちなみに飲酒のきっかけは些細なものだった。在宅の作業所の職員さんの対応に俺が腹を立ててしまい、そのまま自棄のような感じで飲酒を再開した。全部俺が悪いのは言うまでもない。人のせいにしてるだけだ。


 あと、とあるバンドのライブに参加したのだが、それがあまりにも楽しすぎて、俺は勝手に燃え尽き症候群みたいになった。それも飲酒再開のトリガーかもしれないと自己分析する。でもそのバンドは何一つ悪くない。勝手にチケットを買って参加して超楽しんだ俺が悪い。


 酒を辞めることのメリットは深く学習した。酒を飲んでいたら俺の場合、幸せになる事はまず無い。それも理解していた。


 でも俺は簡単に飲酒を再開した。


 だから、俺は余計に自分の事がよく分からなくなってしまった。


 ◆


 この文を書いている中で、早めに「専門機関に入院したい」という気持ちがとても強くなってきている事に気付いた。


 親の都合やお金の問題もあるから、今すぐというわけにはいかないと思うが、できれば早めに入院がしたい。


 幸せになる確率を少しでも上げるためには、やっぱり俺は永遠に酒を辞めるべきなのだ。


 俺が飲酒を再開し、俺は自分の家族を悲しませた。俺自身も、俺に対して失望した。もしかしたら、カクヨムの読者さんの中にも俺に強く失望している方がいるかもしれない。


 ◆


 精神疾患を持っている人にとっては、「退屈だなー、暇だなー」と感じているくらいが1番精神的に良い状態だと、俺の姉が最近言っていた。大きな刺激は良い方向に向くこともあれば、悪い方向に向くこともあるらしい。重みのある言葉だと感じた。


 心のバランスをとるのは、難しい。


 とにかく俺は自分に呆れている。


 好きになれる要素なんてない。


 こうやって自分を否定しすぎるのが良くない事も知っているが、今はどうしても、自己否定が止まらない。


 そして俺は今、ストロングゼロという缶チューハイを飲んでいる。母との約束の範囲内で。15時半以降。4本という決め事の中で飲んでいる。特に酔ってはいないが、心は落ち着いているような気がする。


 でも俺は俺を信用できなくなった。


 母との決め事もきっと俺はいつか破る。だから、その前に俺は入院しておきたい。


 さっき姉からLINEが来た。すごく優しいLINEだった。全ては書かないが、俺は救われた気持ちになった。詳しいことは書かないけど、姉もメンタル疾患でずっと苦しんできた。そんな姉だからこそ言葉の端々から優しさを感じる。


「なんとなく生きてたら、だんだん楽になる事もあると思うんだ」


 とか、他にもいろんな言葉をくれた。


「ままから聞いたけど、つらかったね……。自分の意志でどうにかなるなら依存症じゃないから。それなのに●●(俺の名前)は凄く頑張ってたと思う。作業所もやってて断酒もやってて大変だったと思う。だからあんまり自分を責めないで。また頑張る気持ちがあるなら頑張れば良いと思うし、●●が時には失敗しても、ずっと応援してるから。~中略~。マイペースで行こう。私も別に偉く言えたもんじゃないからさ。周りの人に比べて死にたい頻度は多いし、たまに薬飲みすぎるし、自傷もたまにするしさ。でも前よりかはすごく良くなってるんだ」


 ~後略~。


 全部は書かない。


 でも、姉からのLINEで心が楽になれたのは確かだ。


 俺の未来が今後どうなっていくかは分からないけど、入院をしたい気持ちはある。専門の病院やAAや断酒会と繋がりを持ちたい気持ちが強い。俺の人生にとって、アルコールはどう考えても不要だ。


 俺は後悔だらけの人生だ。でもまだ28歳だ。人生はまだ長いと思う。酒の影響で長生きは既に出来ない身体になってると思うけど。


 俺は今まで3回も急性膵炎で入院した。急性膵炎の身体症状だと明らかに分かっていながらも病院に行かなかったことは2回ある。自然治癒するまでが地獄だった。


 俺はきっと長生きできない。


 それでも諦めたくない。俺は酒で記憶を完全に失うたびに、死にたくなるほど後悔する。家族にはかなり謝罪をした。俺は自分が誰なのか、よく分からなくなってきている。それでも俺が「Unknown」だという記憶はしっかり残っている。


 俺が「Unknown」である事さえも忘れた日、その日が俺にとっての完全なる死なのだろう。


 俺はまだ人生を諦めたくない。だから自分なりのペースで頑張っていく予定。








 終わり

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