だから無くならない - 文学に見る人間の普遍性と継承、そして警鐘 -
- ★★★ Excellent!!!
本作はフランスを舞台に、愛国者と移民を題材にした悲劇の物語です。
インバウンド、移民、税金の使途等々の話題に過敏になりつつある昨今の日本の風潮を鑑みた視点で興味を惹かれる方、何かを想起する方も少なくないかもしれません。
けれども本作は、より分かりやすく伝えるために具体性を重視した側面がありつつ、人間の普遍性が抽象化され散りばめられた上質な文学作品であり、短編小説であるが故に、それらがビビットに浮かび上がってくるように感じられました。
◉人間は一人では生きられない
◉行き過ぎた思想と愛が冷める(同じ方角を見て歩けなくなる)瞬間
◉一つの考え、或いは特定の思想に傾倒することへの警鐘
◉大人(親)の考え方や言動が子供に及ぼす影響
今回の読書では、個人的に4つ目が最も色濃く自身に沁みてきました。
最近SNS上で、「泥だらけになって田仕事をしていたところ、通りすがりの親が子に『ちゃんと勉強しないと、あんな汚い仕事しかできなくなるよ』と諭すように話すのが聞こえてきて、その言葉以上に子供の視線が痛かった」という投稿を見かけたばかりだからかもしれません。
けれども手間暇を要し気象と向き合う難しい仕事をされている方が、もう家族・親類の分だけで良いか、と生産方針を移行してゆけば、それまでパラサイト(依存)してきた者たちは「輸入すればいい」と別の宿主を探せばそれで済むでしょうか。
また本作をごくストレートに解釈してみると、パラサイト(寄生)されていると妄執(思想的感染、あるいは闇堕ち)する者が、実に多方面にパラサイト(依存)していることの滑稽さを浮き彫りにした寓話的で笑えないファルス(喜劇)とも言えるかもしれません。