39℃の気温は暑いのに、なぜ39℃のお風呂は熱くないのか?

アイス・アルジ

第1話 謎の解明(考察)

 今年(2025年)は梅雨明け前なのに暑い日が続いています。我が家のお風呂(お湯)の温度設定は39℃に下げました。もし気温が39℃あればすごく暑いのに、39℃のお風呂は暑いどころか〝ちょうどいい〟(少しぬるめかもしれません)。これはよくある疑問でしょうが、なぜでしょうか? 

 

 NHKの人気番組〝チコちゃんに叱られる〟で〝気温40度は暑いのにお風呂40度がちょうどいいのはなぜ?〟と、取り上げられたそうです。答えは人が熱いと感じるのは〝皮膚の温度〟が重要だからだそうです。要約すると、お湯(水)のほうが空気より熱伝導率が高いので、お風呂では一瞬で皮膚温度が上昇する(40℃以上にならない)。いっぽう空気では、長い時間をかけて皮膚温度が上がり続ける。この〝上がり続ける状態〟が暑く感じる原因だそうです。確かにお風呂に入ると、一瞬、熱(暑)くてもしばらくして熱(暑)く感じなくなることがあります。これが定説のようですが、しかし、これって本当でしょうか? 空気中にいても、いずれは皮膚温度が一定になるはずです。そのとき暑く感じなくなるのでしょうか? 


 これには続きの解釈があるようです。(空気中では)暑く感じると汗をかき皮膚温度が上がりません(むしろ下がります)。結果として空気からは、皮膚温度を常に上げようとする熱が伝わり続け、ずっと暑いと感じるそうです。でもこれでは、扇風機で皮膚をもっと冷やせば、さらに暑く感じることになるのでは?

 人の深部体温は約37℃で一定していますが、皮膚温度は外気の影響で上下します。この温度差が〝暑い、寒い〟という感覚に影響しているということです。

 確かに特殊な状況下では、その通りでしょう。冷たい水に手を入れて皮膚温度が十分下がった状態で、30℃前後の外気中に手を出せば、温かく感じるでしょう。いっぽう熱いお湯に手を入れ、熱くなった後に外気中に手を出せば涼しく感じるでしょう。でもこれは、気温の高い日に〝今日は暑いね〟と言い、温泉に浸かって〝ああ、気持ちいい〟と言いう身体感覚とはちょっと違います。

 

 体表が〝暑い、冷たい〟と感じる皮膚の温度感覚と、体全体が〝暑い、寒い〟と感じる身体的温度感覚は別物です(関連はあるでしょうが)。体全体で感じる温度感覚は体の深部体温の影響が大きいと思います。

 皮膚温度は環境により上下するのに対し、深部体温はほとんど上下しません。もし深部体温が上下するような場合は、生死にかかわる危険な状況だということになります。人(恒温動物)は、この危険な状況を避けるために、深部体温が上がりそうだと判断すると〝暑い〟と感じ、深部体温が下がりそうだと判断すると〝寒い〟と感じるのではないでしょうか。

 体にはいくつもの温度センサーがあります。皮膚の温点と冷点、痛点。たぶん、体内(筋肉や臓器)にも何らかのセンサーがると思われます。これらの温度センサーからの情報を、脳(視床下部)が総合判断して〝暑い、寒い〟身体感覚をおこして、暑ければ汗をかき(後で説明しますが、呼吸を早くし)体の熱を逃がそうとし、寒ければ筋肉を震わせ熱を生み出そうとするのでしょう。

 

 温点と冷点は15~40℃の範囲で働き、15℃以下、40℃以上で痛点が働くそうです。このことからセンサーとしては15℃以下が〝寒く〟40℃以上が〝暑い〟と思われます。本来、生物学的には40℃以下では〝暑くない〟はず、と考えるべきかもしれません。


 そうだとすると、なぜか空気中では30℃以上でも熱く感じることになります。これは、空気の熱伝導率が低く保温効果があるためと、人が恒温動物で常に熱を発生させているためかもしれません。もし人間を太陽と同じ重さになるよう密集させれば、太陽よりも高温になるそうです。人はそれほど熱を出しているのです。言い換えれば、常に冷却しなければならない、そうしなければ熱がこもり命の危険がある、ということです。従って、効率よく冷却するため、人にとっての快適な外気(環境温度)は体温より低くなければなりません。感覚的には(とりあえず)〝15~30℃〟くらいでしょうか。それより低ければ寒く感じ、それより高ければ暑く感じるとすれば合理的です。


 お風呂の適温は38~40℃くらいと言われています。これは深部体温37℃を越えていますが、生物学的40℃は超えていません。お風呂の中では発汗による冷却作用はないですが、お湯は比較的熱伝導率が高いため、熱が逃げやすく体内に熱がこもる可能性が低いのかもしれません(脳はそこまで敏感に感じ取っているのかもしれません)。

 また、お風呂に入っていても、頭はお湯から出ているため、体の一部は外気に触れています。これが体感温度に影響している可能性もあります。そこでシュノーケルを付けて頭までお湯につかって実験した例もあるようですが、やはり同じ結果だったそうです。

 別の可能性は、お風呂は長くても20~30分しか入っていない、ということがあります。暑い空気(例えば35~40℃)の中でも20~30分であれば、お風呂のように気持ちいいと感じるかもしれません(確かに寒い日だったら気持ちよさそうです)。

 また、心理面の影響もありそうです。昔、東京の蒸し暑い夏は逃げ出したいほど苦手でしたが、蒸し暑い空気が薄いお湯で、お風呂の中を泳いでいると空想するだけで、少しは不快感が和らぐように感じたものです。ほかにも、人には、皮膚が濡れると体温が下がるという身体的記憶が刷り込まれているため、暑くないだろうと錯覚しているのかもしれませんし、経験知からお風呂は熱くないと判断しているのかもしれません。日本に来た、お風呂の習慣のないアフリカ系の方が、お湯の(熱い)お風呂に入るのは怖いと言っているのを聞いたことがあります。もし目隠しされて、釜茹でだと騙されれば、40℃のお風呂もきっと熱く感じるのではないでしょうか。


 先ほどの40℃という温度には、意味があると思われます。基本的に温度が40℃以上になると、細菌やウイルスが死滅し始めると言われています(従って、人は病気に感染すると40℃以上の熱が出て感染に対抗します)。いっぽう40℃以上は細胞にとっても危険な温度です。逆に言うと40℃以上に体温が上がらなければ、体の細胞にとって心配いらない、暑く感じる必要がないのかもしれません。

 繰り返して言えば、40℃以下のお湯であれば比較的熱伝導律が高いので体温が40℃以上になる危険性が低い。空気は40℃以下でも熱伝導率が低いため体温が40℃を超える可能性がある。


 もう一つ忘れてはいけない要素があります。それは呼吸している空気です。肺には毛細血管が張り巡らされ、呼吸するたびにエアコンの室外機のように空気に熱を排出しています。皮膚の発汗と同等か、それ以上に冷却機能が高いのではないでしょうか(皮膚の総面積、約1.6㎡に対し、肺胞の総表面積は約100㎡もあります)。たとえ暑いお風呂だとしても、その時の室温は30℃以下くらいでしょう。かなりの冷却機能が働いているはずです(実は、これが一番大きな影響を与えていると思っています)。

 暑い夏、かき氷を口に含み、氷に冷やされた冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだことはないですか? 一瞬にして体中が冷えたように感じます。肺の毛細血管が冷やされ、冷えた血液が体内に巡ります。脳、体温を司る視床下部へも最も早く冷えた血液が届きます。脳自体が温度を感じているかどうかは分かりませんが、たぶん脳の温度も体温感覚に影響していると思います。実は脳活動には多くのエネルギー(1日に使うエネルギーの20%)が必要で、多くの熱を発生しています(脳の平均温度は38.5℃、体温より高いそうです)。パソコンの冷却が必要なように、脳にも冷却が必要です。脳の冷却は肺からの血液が担っています。脳の温度が〝暑い、寒い〟身体感覚に、最も影響しているのかもしれません。

 ――誰か研究してみませんか? 例えば暑い作業環境では、作業場全体を冷却するのではなく、呼気だけ冷却すれば効率的(呼気冷却器とか)、熱中症の予防、治療に生かせるかもしれません。


 まとめると、〝チコちゃん〟の回答(定説は)皮膚の温度センサーの反応を説明しているにすぎません。〝暑い、寒い〟の身体的感覚はもっと複合的な要素によるものです。人は発熱しているため、寒さより暑さに敏感でなければならない。生物学的な暑さの閾値は40℃あたりか? 従って深部体温が40℃以下であれば暑く感じる必要はない。

 しかし空気は、熱伝導率が低く保温効果もあるため、気温が40℃以下でも体温が40℃以上になる(熱中症の)可能性がある。そのため外気が約30℃を越すと暑さを感じ始める。

 お風呂のお湯は、熱伝導が比較的高く、40℃以下であれば、長時間入浴しない限り深部体温が40℃以上になる危険性は少ない。さらに呼吸による冷却効果も維持されており、(体内)特に脳に熱がこもる危険性はさらに少ない。お風呂では、体温を下げるよう、あるいはこの環境から逃げるよう促す必要はない。要するに、脳が〝暑い〟とは感じない。

 さらに経験知(視覚情報など)からの心理的影響も加わり、お風呂は熱くないと感じてしまう。



<補足>


 常々、怪しい理論を考えては検討(思考実験)することがよくありますが、今回の〝呼吸の影響〟は、かなり真実味が高いと思っています。確認として、以下の4つの実験の比較ができればかなり証明に近づくと思います。

(1)40℃の外気で、30℃の空気を呼吸する。

(2)40℃のお風呂に入り、30℃の空気を呼吸する。

(3)40℃の外気で、その外気(40℃)を呼吸する。

(4)40℃のお風呂に入り、40℃の空気を呼吸する。

 予想できる〝暑さ〟の順は、〔4≧3>2≧1〕でしょうか? 同じ温度の空気を呼吸しているのであれば、必ずしも〝40℃のお風呂がちょうどいい(熱くない)〟との結果にはならないと想像できます。



  (2025/06/24 アイス・アルジ)

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