最終話:永遠の誓い

式が終わった。

南洋の風が、白いウエディングドレスの

裾を優しく揺らす。

潮の香りと、降り注ぐ太陽の光。

夢のような時間が、ゆっくりと流れていく。


振り返れば、本当に長かった。

あの雨の日、冷たいアスファルトの上で

倒れていた私を見つけてくれた隼人さん。

彼がいなければ、今の私はなかった。

訓練所で流した汗と涙。

みきちゃん、真人くんとの絆。

家族との再会、そして和解。

全てが、この瞬間に繋がっている。


隼人が乗る「プロトタイプ ナンバー23・バハムート」。

漆黒の機体に燦然と輝く御鏡家の紋章が、

その威厳を放っていた。

彼の持つ究極の技術の象徴。

それが、彼自身の、そしてこの国の、

裏側の顔を物語っている。


式後のパーティー。

家族や仲間たちが、笑顔で私たちを囲む。

ママが、私を優しく抱きしめてくれた。

「いずみが幸せなら、ママはそれが一番嬉しい」

私の弟が、隼人の足元で小さな手を引いて、

楽しそうに笑っていた。

隼人も、かがんで弟の頭を優しく撫でる。

その光景は、この平和の象徴のように、私の目に映った。


みきちゃんが、ふと私の耳元で囁いた。

「いずみママ、隼人さんのこと、

これからもずっと、支えてあげてね」

真人も、静かに頷く。

「俺たちも、ついていきますから」

彼らの言葉は、血の繋がりを超えた、

家族としての温かい誓いだった。

みんなで支え合う、私たちの家族。

それは、どんな困難も乗り越えられる、

強い円環なのだと、改めて感じた。


夜が訪れる。

南洋の夜空には、満点の星が輝いていた。

まるで、私たちの未来を祝福するように。

隼人と二人きり。

砂浜に座り、波の音を聞く。

彼の大きな手が、そっと私の手を包んだ。

その温かさが、私の心を深く満たす。


「隼人さん、私、今、世界で一番幸せだよ。

これからもずっと、隼人さんと一緒に、

この道を走り続けたい。

私たち、永遠に一緒だもんね」


私の言葉に、彼は静かに頷く。

その瞳には、穏やかな光が宿っていた。

彼の戦いは、まだ終わらないだろう。

この裏社会で、彼が背負うものは、

これからもきっと、重い。

だが、もう、彼は一人じゃない。

私がいる。

みきちゃんや真人くんがいる。

家族がいる。

彼がくれた、この新しい世界。

その中で、私は彼の隣で、

共に生きていく。


……終わった。

俺の戦いは、まだまだこれからか。

南洋の潮風が、隼人の髪を揺らす。

結婚式は、あくまで始まりだ。

御鏡家上層部では、

この結婚が新たな勢力図の形成を予感させ、

政府高官たちは、

御風家の影響力拡大に静かに警戒を強めているだろう。

裏社会のライバルたちは、

隼人と「御風いずみ」という新たな存在を、

虎視眈々と狙っているはずだ。

ったく、騒がしい人生になりそうだぜ。

お前も、覚悟しとけよ。


いずみの日記:

隼人さん、私、今、世界で一番幸せだよ。

これからもずっと、隼人さんと一緒に、

この道を走り続けたい。

私たち、永遠に一緒だもんね。

私の人生は、あの雨の日から始まったんだ。

本当にありがとう、隼人さん。


(この作品は、これにて完結となります。

これまでお読みいただき、誠にありがとうございました。)

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プロの殺し屋、少女を拾う → 教育する → 結婚する ―御風いずみ婚姻譚― 五平 @FiveFlat

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