ゾンビ化していく兄妹。その悲しみと、徐々に失われて行く『自己』

 ゾンビの目から世界を見る「悲しみ」という視点がとっても斬新です。

 妹がゾンビとなり、看病していた途中で両親も妹が殺してしまう。
 その後もゾンビとして生存(?)だけは続ける悲哀。ゾンビとしての状態に終わりはあるのか。

 理性もほぼ壊れているような状態で、家族との思い出に浸る。
 そして、徐々に「自己」の感覚も薄らいでいく。

 ゾンビの視点で短歌を詠むというのが面白いですし、更にゾンビとなった兄妹が理性を失っていく過程の哀しみの描写も繊細で心に沁みてきます。

 たしかにゾンビになったらこんな風な変化があるだろう、という描写や情緒の揺らぎなど、すごく興味深い仕上がりになっています。

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