点滅

未 詳

ミルクタブレット

牛乳と飲み干したが、おなかを壊しそうな温度だったため後悔している。


生ぬるくて、舌の中央とのどの手前に張り付く流体のわずらわしさに私は眉を顰める。


カーテンの隙間から橙色の光が青い影に包まれて根を下ろしている。


ローテーブルの元を離れて、四つん這になりながらその茎に触れてみる。


手のひらにじわじわと熱が入ってくる。


爪の先がピリピリとしびれてくる。


さっと手を引いて、袖で指先を撫でている。


地面を押して膝を立ててから、カーテンの隙間に少しずつ帰ろうとする柔らかそうでまっすぐな光の柱を見つめている。


指先から煙が湧いているような気がしている。


小走りでキッチンに入り、蛇口をひねる。


黙ったまま指先に水流の当たる感覚を楽しむ。


この時期は日が長いから困る。


口を開けて、八重歯を縦になぞって長さを見る。


中指の腹を八重歯の先で少し押し込む。


皮膚とエナメル質の感触を互いに確かめ合う。


やはり鋭かった。


痛みを感じたため、指を離す。


中指と親指を擦り合わせて、傷が無いか見る。


指の上で小さな血の雫が膨らんできた。


舌の先端を出して、それを舐めとる。


瞼は下がり続ける。


腹の奥の奥が悲鳴を上げる。


リビングのテレビとローテーブルの前で、座椅子に胡座をかく。


自分の太ももと、ピンクと白のボーダーでモコモコなパジャマの感覚を確かめる。


木製の表面がなめらかなローテーブルに、右腕をのばして左手を枕につっ伏す。


レースカーテンの綿毛のようにパヤパヤした光を見ながら、少しずつ目を閉じる。


体の芯が机や床に溶けだしていくのを感じる。



玄関の花瓶にさした沈丁花が折れ、ドアに向かって頭を垂れた。

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点滅 未 詳 @ginta_ooyama

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