オン・ザ・リッツ・オア・ダイ
脳幹 まこと
オン・ザ・リッツしよ
オン・ザ・リッツしながらこの文章を書いている。
とはいえ、リッツの上にあるのはリッツであり、上のリッツの上には何も置かれていない。これは沢口靖子が示したルールに反するのではないか、すなわち万死に値するのではないのか、と戦々恐々していたが、沢口靖子ともあろう人物が私如き小市民を相手にすることはないのか、今のところはこのリッツ・オン・ザ・リッツによって生き永らえている。ちなみにレギュラーサイズは1袋に13枚と微妙に縁起が悪く、最後だけはリッツ・オン・ザ・リッツ・オン・ザ・リッツしなければならない。そういう規則になっている。
そんなに食べたら、すぐなくなってしまわないかと思われがちだが、部屋には四箱のリッツの空き箱と八箱のリッツの在庫があるので今のところは大丈夫だ。ドラッグストアで物凄い安い時にまとめて買っている。サクッとした食感、ほどよい塩味。沢口靖子の
そう、リッツとの出会いは、沢口靖子との出会いでもある。何気なくテレビをつけた時、ちょうどCMで沢口靖子が出ていた。
「ああ、科捜研のあの人だ」と何気なく画面を見ていたら、沢口靖子の眼が七色に激しく光った。うおまぶしっ、と目をつぶったのがいけなかったのだろう。目を開けた瞬間、私の脳裏にカチっという音とともに冷たい筒状の金属が突き付けられた。
「オン・ザ・リッツ・オア・ダイ」
間違いない。この人は
当時はちょうどマーガリンがあったのでそれを塗って食べたのを覚えている。色々オンしてみたが、リッツの上にリッツが一番うまいことに気付いて、ずっとこの調子だ。
あなたが死んで、目の前に沢口靖子がいたらそこは間違いなく天国である。
沢口靖子はそういう雰囲気のある女優だと思う。目の前にガッキーとか
他にも穏やかそうなベテラン女優はいるわけだが、沢口靖子ははっきりと「天国」という印象がある。それは理想郷としての天国というより、
何故かと思ったのだが、振り返ってみると、名ドラマ「
その際の役は潔癖な修道女だった。規律が全身を覆っているような人で、あらゆる時でも規律を優先し、それ以外のあらゆるものに興味がなさそうな、そういう真面目な人だった。
ここに沢口靖子がピタリと当てはまった。いや、「古畑任三郎」は大体ピタリと当てはまるというか、物語が当てはめにいってるような印象すらあるので、沢口靖子だけが例外というわけでもないが、何十人もの犯人の中でも印象に残ったのは確かだった。
古畑任三郎には独自のルール、価値観に従って動く人物が登場するのだが、その中でも有名なのが歌舞伎俳優・
有り体に言えばサイコパスであり、「自分と(売れる)美術品以外は総じてゴミ」みたいな価値観。これだけ言うとよくあるキャラクター造形なのだが、とにかく仕草がなめらかで柔らかい。なんとも和な感じ。口調も穏やかで人の良さそうなお方なのだが、その雰囲気そのままにチャカを取り出して躊躇いなくぶっ放すというシーンに入るものだからインパクト大。
この人やってることだけ挙げると「人でなし」極まりないのだが、それを演技で魅力に変えてしまうのが恐ろしいところ。
ちなみに古畑任三郎で一番好きな台詞は、木の実ナナ演じる犯人の「
話はオン・ザ・リッツ、ひいては沢口靖子に戻る。
平日のお昼ご飯は、専らファミマの「北海道産牛乳を使ったミルクドーナツ」を食べている。ここら辺の経緯は既に「ドーナツ飯」という別のエッセイを書いているので、そちらに譲ることにする。
https://kakuyomu.jp/works/16818093093211188331/episodes/16818093093211339197
で、朝や夜は何を食べているかという点であるが、これは気分によってくる。
買い出しに行く気が起こらなければオン・ザ・リッツする。身体がだるくてもオン・ザ・リッツ、雨が降っていてもオン・ザ・リッツだ。
すなわち、朝リッツ、昼ドーナツ、夜リッツというパターンもありうる。これで身体がちゃんと動くのだから、人体というのは恐ろしいものだ。
もちろん、このような食生活が続けばじきにこの世からアウト・ザ・リッツすることになると思われるが、その時にオン・ザ・リッツし続けた信者たる私の眼前に、沢口靖子はいてくれるだろうか。
いや、恐らくそんなことにはならないのだ。
それは自分が地獄に行くからとかそういうものではなく、実際に天国に行くときに天使が付き添ってくれるかと言えばそういうものではないのと同じで、
オン・ザ・リッツ・オア・ダイ 脳幹 まこと @ReviveSoul
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