十種短歌「それぞれの恋」
小乃 夜
十首連作「それぞれの恋」
イヤホンの片方渡す坂の道 知らない曲が「好き」になる予感
「おやすみ」のあとの沈黙見つめてる 緑のランプが消えるまで待つ
ただいまの聞こえぬ部屋のドア開けて 「おかえり」と書く湯気の向こうに
君のつくため息の癖うつされた 紅茶をふたつ淹れる夕暮れ
返信はいつも優しい だから辛い 「友達」の線そこにあるから
同じ月見上げていると信じたい 会えない夜の言い訳にして
自販機の微糖コーヒー選ぶとき ふいにあなたの指を思い出す
君が去りしポトスに水をやることは 「私」だけの朝に取り戻すこと
丸まった背中さすって眠る犬 これもひとつの恋のかたちか
それぞれの恋という名の物語 めくれば違う空の色あり
十種短歌「それぞれの恋」 小乃 夜 @kono3030
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