『詠めない、詠えない』

威火兎禍断孤(いかとかたこ)

『詠めない、詠えない』

1

歌にする、

歌がないから

歌えない。

という歌にも

歌心なく。


2

絶景を

感じもせずに

撮る癖が

歌にならない

わかっているのに


3

絶景に

感じなかった

この心

露天風呂だけ

詩になりそうで


4

天才と

書いた深夜の

あの歌を

朝の駅では

背がぞわついた


5

綺麗さに

惹かれて並べ

繋げれば

継ぎ接ぎだらけ

フランケンかな


6

若者に

向けたつもりが

古くさく

年配向けは

浅いと言われ


7

感謝など

歌にすればと

詠んだけど

見せる勇気が

どこにもなくて


8

怒りなら

語彙とひねりが

湧いてくる

上司の名だけ

五音に収まる


9

詠もうとし

自問自答を

繰り返し

たどり着くのは

愚かな自分


10

親の情

歌にしようと

向き合えば

文字より先に

こぼれる涙


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『詠めない、詠えない』 威火兎禍断孤(いかとかたこ) @piro-mipiwo

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