第3話
次の日、シャミッソーが農作業をしていると、一人のうら若き若者が館の門で入ろうか、入るまいか呻吟しているのを見つけた。
(きっと、旦那様の客人だろう)
シャミッソーはそう思うと、再び作業に戻った。
「すみません、ここはレーガル伯爵のお住まいですか?」
声をかけられて振り返ると、先ほど門のところにいた客人の男だった。金髪を真ん中で分けていて、青い瞳をしていた。見た目はとても美しく、まるで俳優のようだった。
「えぇ、そうですが…」
「コロヴィエフというものです。
伯爵と約束をしていて。伝えてもらえませんか?」
「はあ、少々お待ちください」
館に入って、レーガル伯爵の部屋に向かう。汚れた格好を直してからのほうが良さそうに思えたが、あまり客人を待たせるのもいかがなものかと思い、すぐに向かった。ドアをノックし、用件を言う。
「失礼します、旦那様と会う約束をしたという方がいらっしゃいました」
「ああ、わかった。通してくれ」
再び、男の前に行き案内すると、レーガル伯爵が部屋から出てきて、男を待っていた。男は再会を愛でるように親しげに伯爵に挨拶を言うと、二人は部屋の中に入っていった。
農作業に戻ろうと、館を出て、外に向かうと下女のマシカとすれ違った。彼女は三十代でまだ独身だが、口うるさくて、とても一緒にいれない人間だった。過去に何度も彼女との縁談話があったが、すぐに断ってしまった。彼女といるくらいなら1人を選ぶ。きっと他の男たちも同じことを思うことだろう。
「あら、シャミッソー。なんであんたが作業から離れてるわけ?」
「あぁ、おはよう。旦那様にお客様を案内していたんだ」
「それはあんたの仕事じゃないでしょ。余計なことしないでよね」
「お客様が俺に話しかけてきたから、無下にできなかったんだ」
「あら、そう。でも旦那さまからはお客様が来る話なんて言われなかったわ」
「約束してなかったのかな」
「さあね。そんなに大事な客じゃないのかもね」
冷たき館の底 @acdc28882
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。冷たき館の底の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます