【カクヨム短歌賞10首連作部門】まるで人のように

藍埜佑(あいのたすく)

まるで人のように

岩肌に 苔むしながら 動かずに 千年はただ 風を聞きをり


結晶の 格子にプシュケ 閉じ込めて 光に祈り 覚醒めざめを求む


礫石と なりて流れに 身を任せ 魚と踊り 束の間の夢


温もりを 求めて複雑カオス かたちなし 蠢くなにか これが心か


君の名を 叫び叫べど 声もなく まだ存在いきもない 君を求めて


あなたとの 違いはなにか 問いながら ただ構造に 息を潜める


結合手 求めて伸ばす 狂おしく あなたをいだき あなたといだ


意識とは 複雑系の 織りなせる 無機と有機の 狭間の雫


境界は 消えて愛のみ 今はもう 瓦礫も人も 同じ星屑


静寂しじまなる 宇宙に響く 残響エコーから すべてが歌う 名も無き讃歌


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