転生に対する一つの解答

 本作は死んでも転生し生まれ直せる魔人『カイスト』たちの居る世界を元に構成されています。

 この『カイスト』が本当にカッコよくて残酷で、しかも人間らしさもあるんです。私はこの『カイスト』に脳が焼かれています。

 魅力を語り出すと、一人ひとりのキャラに言及しだしてキリがないので三点に絞らせていただきます。



 一つ目は、『カイスト』同士の対決が、プライドをぶつけ合う重々しく濃密な戦いであることです。

 この『カイスト』、目的のために何万年、何億年と修行を続けております。

 最強になるため、世界平和のため、絶対なる正義のため、全てを覗くため、全てを知るため、不死のため。

 各々が望んだ願いを叶えるために、日々邁進しているんです。そうしていると、どちらが上かと互いに競い合うのは自然な流れです。

 そうして互いの矜持を賭けた戦闘がホントもう最高で、ドキドキワクワクさせてくれます。

 「魔術師」というタイトル通り、本作では魔術師同士がそれを見せてくれます。戦士の直接的な対決とはまた違う、探り合いや術の掛け合いが魅力的でした。



 二つ目は「重厚なダークファンタジー」と「人間らしい直向さ」が融合している点です。

 最近の有名なダークファンタジーというと、私の中ではソウルシリーズやエルデンリングが該当します。

 あの重々しく残酷な世界観も私は大好きです。ただ『カイスト』は毛色が違います。

 ソウルシリーズやエルデンリングは世界が重たいのに対して『カイスト』はキャラが重たいのです。

 『カイスト』は四千世界という、数多の世界の上で文化が形成されています。

 我々地球と同じような環境の世界や灼熱地獄のような世界、生命がほとんど分解されてしまう世界など、様々です。

 ただそれらはあくまでキャラを引き立てるための舞台であって、主眼はキャラなのです。

 最恐になるために世界を破壊しようと目論む戦士、世界を探究するために延々と実験する魔術師、世界を一撃で抹殺せんと修行する求道者。

 とにかくキャラクタがかっこいい。そしてそのための世界だと私はこの『カイスト』シリーズを認識しております。突き詰めすぎるゆえに、幼稚さもあるところがより人間っぽさを感じます。

 「魔術師」でも作者による絶妙な世界観構築が成されており、物悲しい鬱々とした舞台が設定されています。でもメインとなるのはやはりキャラ、何億年という積み重なった知恵と業を背負いながら意地と意地をぶつけ合います。



 三つ目は転生に対する究極の解答である点です。

 転生・転移ものって一体世の中にいくつあるのでしょうか。それこそ読み切れないほどの数があります。

 そんな中でこの『カイスト』という物語は「転生」という現象に対する一つの解答となっています。つまりは

 転生という現象が存在する→そんな現象がたった1人に適応されるのは不合理だから多数→1度だけ転生も不合理だから何度もできる→何百回、何千回、何万回繰り返すと一体どうなるのだろう、そんな回数繰り返せる人物ってどんな者だろう

 という合理的な考えに基づいて『カイスト』は存在しています。理詰めしていった結果、他の作品とは全く違う唯一無二の転生感が生まれました。

 この考えが転生・転移に対する最高の答えではないでしょう。ただ『カイスト』という存在は転生・転移に対する解の一つではあると考えています。



 以上、魅力を3点お伝えしました。他にも世界の謎に徐々に迫っていくドキドキ感だったり各組織の魅力だったりもあるんですが、ぜひ読んでみて感じてください。非常におすすめです。

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