最終話 真実の追跡、そして新たな旅立ち
将吾の告白により、遥を死に追いやった「吸血鬼の歯型」のトリック、そして彼の狂気の裏に潜む「ナイトロード」の存在が明らかになった。
私たちはルーマニア警察に全ての証拠を提出し、彼らは「ナイトロード」の正体を突き止めるべく、オンラインフォーラムの運営元に情報開示を要請するなど、本格的な捜査に乗り出した。
しかし、ルーマニアでの私たちの修学旅行は、悲劇的な幕を閉じることになった。
遥の遺体は日本に送還され、私たちは残された者として、重い心で帰国の途についた。
飛行機の窓から見えるルーマニアの景色は、私にはもう、かつてのような美しいものには見えなかった。
あの古城の陰には、人間の心の闇と、それを食い物にする悪意が潜んでいたのだ。
日本に帰国後、私たちはそれぞれ日常に戻ったが、遥の死と、将吾の事件が私たちに残した傷跡は深く、決して癒えることはなかった。
拓海は、将吾の事件をきっかけに、ネット上の心理操作や洗脳について独自に調査を始め、将来はデジタル犯罪の専門家になりたいと語るようになった。
イアナは、ルーマニアの伝承と人間の心の闇の関連性について、さらに深く学ぶため、大学で心理学を専攻することを決意した。
そして、私は、この事件を通じて得た経験を胸に、ジャーナリストの道を志すようになった。
数ヶ月後、ルーマニア警察から連絡が入った。
「ナイトロード」の正体が判明したというのだ。
彼の名は、セルゲイ・ヴォルコフ。
かつてルーマニアの大学で心理学を教えていた元教授だった。
彼は、自身の研究のため、インターネット上で心の弱い人間をターゲットにし、架空の「吸血鬼伝説」を植え付けるという、恐ろしい実験を行っていたのだ。
将吾は、その実験の哀れな犠牲者の一人だった。
セルゲイは、将吾の孤独と「ドラキュラの末裔」という妄想につけ込み、巧みに彼を操っていた。
遥の死は、彼の「実験」における、恐るべき結果だったのだ。
セルゲイはルーマニア国内で逮捕され、彼が過去に行った同様の「実験」についても捜査が進められることになった。
遥を殺害した真犯人は将吾だった。
しかし、彼の行動の裏には、セルゲイという人間の悪意が潜んでいた。
私たちは、この事件の全ての真実を白日の下に晒すことができた。
だが、遥はもういない。
そして、将吾は、彼の妄想と洗脳の狭間で、一生苦しむことになるだろう。
私たちがルーマニアで経験したことは、決して忘れることのできない悲劇だった。
しかし、私たちはこの経験から、人間の心の闇の深さ、そしてデジタル社会に潜む危険を知った。
そして、どんな困難な状況にあっても、真実を追い求めることの重要性を学んだ。
遥の死は、私たちに残された者にとって、新たな旅立ちのきっかけとなった。
私たちは、それぞれの道に進み、この経験を胸に、未来へと歩み続ける。
あのルーマニアの古城の陰で起こった悲劇は、私たちに、決して忘れられない教訓を与えてくれたのだから。
美羽の事件簿〜ドラキュラの末裔殺人事件〜 兒嶌柳大郎 @kojima_ryutaro
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