第29話 ドラキュラの末裔の正体
将吾の告白と、彼の精神鑑定が始まる中、私たちは「ナイトロード」という謎の存在の正体に迫るべく、拓海の解析にすべてを委ねていた。
将吾の孤独な過去と、彼が「ドラキュラの末裔」という妄想に陥る過程を辿ることは、真の闇を理解する上で不可欠だった。
拓海は、将吾が幼い頃から利用していたオンラインフォーラムのログをさらに深く掘り下げていた。
そこには、将吾が現実世界で感じていた疎外感、そして吸血鬼伝説に没頭することで得られる「特別な自分」という感覚が克明に綴られていた。
彼の「ドラキュラの末裔」という自称は、まさに彼のアイデンティティそのものだったのだ。
「将吾は、現実で満たされない承認欲求を、この架空の世界で満たそうとしていたんだ。そして、その世界で彼を承認し、さらに煽っていたのが『ナイトロード』だった」
拓海の言葉に、私は将吾の心の弱さに付け込まれた彼の悲劇を思った。
彼の妄想は、単なる子供の遊びではなく、彼にとっての生きる支えだったのだ。
拓海は、将吾と「ナイトロード」のやり取りの中から、いくつかの共通点を見つけ出した。二人が使用していた特定の専門用語、そして、ルーマニアの吸血鬼伝説の中でも、特に血や儀式にまつわる、より陰惨な部分に異常な関心を示していること。
「将吾は、最初からこの『血の儀式』に興味があったわけじゃない。ナイトロードが、彼をそちらの方向へ誘導していたんだ」
拓海の解析は、将吾の狂気が、外部からの影響によって徐々に形成されていったことを示唆していた。
ナイトロードは、将吾の「ドラキュラの末裔」という妄想を肯定し、彼をさらに深淵へと誘い込んだのだ。
その時、イアナが静かに口を開いた。
彼女は、将吾の精神鑑定の結果について、ルーマニアの精神科医から説明を受けていたという。
「将吾さんは、重度の妄想性障害を抱えていると診断されました。しかし、それは、彼自身の精神的な弱さだけでなく、外部からの強い暗示によって引き起こされた可能性が高いと…」
イアナの言葉は、拓海の解析結果と完全に合致していた。
将吾の精神鑑定でも、「ナイトロード」という存在が、彼の精神状態に大きな影響を与えていることが指摘されたのだ。
「ルーマニアの伝承では、心に闇を抱えた者が、悪しき霊に魅入られると言われています。しかし、それは、私たち人間の弱さにつけ込む、見えない存在です。ナイトロードは、まさにその『見えない存在』を装い、将吾さんの心を蝕んでいったのでしょう」
イアナは、将吾が語った「ドラキュラ」とは、彼の心の中に潜む「弱さ」と、それに付け込んだ「ナイトロード」という人間の悪意が融合した、恐ろしい存在だったのだと語った。
将吾が信じた「ドラキュラの末裔」の正体は、彼自身の孤独と、それを巧妙に利用した人間の闇だった。
私たちのホテルでの待機期間も終わりに近づき、日本への帰国が間近に迫っていた。
しかし、「ナイトロード」の正体は、まだ掴めていない。
彼が誰なのか、なぜ将吾をここまで操ったのか。
事件の真の黒幕は、まだ闇の中に潜んでいる。
私たちは、この「ナイトロード」を追い詰めることを誓った。
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